「文藝春秋」12月号(11月10日発売)では「後世に遺したい昭和歌謡」110曲を選定し、「昭和万謡集」(五木寛之さん命名)として発表する。
準備から決定に至るまで約1年。この企画は、作家の五木寛之氏の「古代に編まれた『万葉集』のように昭和歌謡の万葉集を作って、1000年先まで残る記録として保存したい」という呼びかけがきっかけで始まった。
各自選りすぐりの20曲を持ち寄り議論
今年9月、五木寛之氏、数学者で作家の藤原正彦氏、脚本家の内館牧子氏、歌手のジュディ・オング氏、音楽評論家の片山杜秀氏、エッセイストの酒井順子氏がホテルニューオータニに集まった。
各氏選りすぐりの20曲を持ち寄り、それらを踏まえて、約3時間におよぶ議論が行われた。
〈20曲に絞るのが本当に難しくて、涙を呑んで選びました。このような企画では、時を超えて今でも愛される普遍的な名曲を選びがちですが、その時の日本人の感情を掴み取り、結晶にしたがゆえに爆発的なヒット曲にはなったけれども、瞬く間に忘れ去られてしまったような歌もなるべく入れるように努めました。花火のように打ち上げられ、一世を風靡し、美しい花を咲かせるけれども、一瞬で燃え尽き消え去ってしまうのもまた、歌謡曲の本質の一つだと思うからです〉
座談会の冒頭、五木氏が自身の選考基準を明かしたうえで、戦後間もなく大流行した藤山一郎の「青い山脈」を挙げた。さらに一節太郎の「浪曲子守唄」やさくらと一郎「昭和枯れすゝき」など一世を風靡した曲も選んでいる。
現役の歌手から唯一の参加となったジュディ・オング氏は〈私自身が歌を歌う人間なので、16歳でデビューしてから今に至るまで自分が生で聴いて感銘を受けた20曲を選びました〉と語り、菊池章子の「星の流れに」、水原弘の「黄昏のビギン」、マイク眞木の「バラが咲いた」などを選んだ。
一方、ニューミュージック黎明期の昭和40年代に生まれた酒井順子氏は、荒井由実「中央フリーウェイ」や原田真二の「てぃーんず ぶるーす」、松田聖子の「青い珊瑚礁」などの魅力を語っている。
「文藝春秋」12月号(11月9日発売)および「文藝春秋 電子版」(11月8日公開)に掲載される座談会「昭和万謡集 ベスト100歌謡曲」では、この他、藤原正彦氏、内館牧子氏、片山杜秀氏が選んだ名曲を紹介。110曲のリストも一挙公開する。
また、昭和歌謡には東北発のご当地ソングが多い理由や阿木燿子や松本隆など作詞家の世界観の魅力なども語られている。
選考座談会「昭和万謡集 ベスト100歌謡曲」
【文藝春秋 目次】〈緊急特集〉石破首相の煉獄 自民党崩壊 久米晃×曽我豪×中北浩爾/ジャンル別ガイド あなたに見てほしい映画/5つの臓器のアンチエイジング
2024年12月号
2024年11月9日 発売
1100円(税込)