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「ホワイト案件」と書かれた罠

 宝田は、国民健康保険料の滞納が数十万円分あったといい、短期間で稼げるアルバイトを求めてSNSで検索。飛びついたのが、犯罪性のないことを示す「ホワイト案件」と書かれた投稿だった。だが、それこそがトクリュウの罠。「ドライバー業務」「日当5万円から」といった文言を駆使し、金に目が眩んだカモを手駒として搦め捕っていくのだ。

 食いつくと通信アプリでのやりとりに移行。免許証を持った自撮り画像を送らせるなどし、正体不明の指示役たちに個人情報を掌握される。その先に待ち受けているのは、蟻地獄のような恐怖による支配だ。宝田はこうも供述している。

「途中で犯罪に加担することに気付いたが、家族に危害が加えられるかもしれないと考え、断れなかった」

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指示役とのトラブルで、制裁を受けた応募者もいる。

 これまで逮捕された実行犯の幾人もが同様の供述をしているほか、実際に制裁を受けた応募者もいる。

「8月末、埼玉県で起きた強盗致傷、逮捕監禁事件です。被害者は34歳の派遣社員で、闇バイトに応募後、指示役と報酬絡みのトラブルに。報酬を渡すと指定された公園で、指示役に雇われた複数の闇バイトから暴行を受けた。さらに指示役は新たな闇バイトに『暴行して現金を奪ってこい』と命令し、暴行の4日後、派遣社員の実家を襲撃させようとした。これらも、同じ指示役グループによる犯行の一部とみられる」(前出・捜査関係者)

「お金に困っているような様子は、全く分からなかった」

 宝田の祖父が、無念さを滲ませる。

「家族に危害が、といっても、なぜ犯罪だと気づいた時に思いとどまらなかったのか……」

 宝田は千葉県内の自宅で祖父母、離婚した父親と暮らしていた。

「真月は『勉強が面倒くさい』と高校を中退。塗装関係の仕事をしていました。税金の滞納のことやお金に困っているような様子は、全く分からなかった」(同前)

 横浜の事件に加わる前日の14日、宝田は夜10時頃に自宅を出て、16日の明け方に帰宅したという。

「後藤さんとそのご家族には、本当に申し訳なく、言葉がありません」(同前)

断ろうとすれば『殺すぞ』と脅された

 一方、闇バイトの構造から抜け出せなかったのが住所・職業不詳の森田梨公哉(りきや)(24)だ。9月30日の東京都国分寺市、10月1日の埼玉県所沢市の強盗致傷事件に加わり、公開指名手配になった男である。

「森田は逃走中、埼玉県内の特殊詐欺にも『受け子』として関与。10月7日、新潟県内で身柄を拘束された際も『受け子』の真っ最中で、現金200万円入りの紙袋を所持していた。指示役から『詐欺よりも儲かる』からと提示された仕事が強盗で、森田ら実行犯は、断ろうとすれば『殺すぞ』と脅され、犯行がうまくいくと『よく頑張ったな』と労われた」(別の捜査関係者)

 狼藉の限りを尽くす指示役たちは何者なのか。首謀者の一掃に向け、警察の威信をかけた戦いが続く。

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週刊文春 電子版」では、この記事のほか「闇バイト強盗から身を守る5カ条」も紹介している。