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 このときの切迫した事情を市役所の担当者が察知して、家庭訪問でもしていれば、悲惨なネグレクトは食い止められたかもしれない。だが、市役所は杜撰な聞き取り調査しかせず、真理が「彼氏と一緒に暮らしている」と言ったので、「同居している内縁関係の男性がいるならば、児童扶養手当の該当基準から外れる」と説明し、翌月から児童扶養手当を打ち切った。

 これで真理は市役所への不信感を募らせ、これ以後、連絡を取ることはなくなった。子供たちだけが残された市営住宅の部屋は荒れ放題で、近所からは悪臭の苦情が市役所に寄せられるようになった。

 悪臭の源となっている部屋は、近所の人が何度チャイムを鳴らしても応答がない。ベランダに干されていた布団は雨ざらしになり、隣の部屋にはウジ虫が這ってくるほどの深刻な状態になった。

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 住民から苦情を受けた市役所の担当者が真理の携帯電話に連絡し、「部屋を使用していないようですが、入居を続ける意思はあるのですか?」と聞くと、真理は「ありません。退去します」と答えた。

部屋に入るとガリガリの長男が…

 その期限の日、真理は約1カ月ぶりに自宅に戻った。思い切ってドアを開けたところ、ガリガリにやせ細った長男が飛び付いてきた。

「ママ、遅いよ…」