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「おじさんじゃん」という目線

「32歳くらいのときでした。そのときは、もう自分より一回り下の女の子が来店するし、後輩もそのくらいの年齢になる。そうすると30歳超えって、完全におじさん扱いなわけです。『おじさんじゃん』という目線だったり、空気はかなり感じました。もちろん、自分自身も見た目が老けていくので、昔より写真指名も減ります。そういうことで自分のプレイヤーとしての味というか、ホストとしての魅力がなくなっているのを自覚しました。それで、売れる気がまったくしなくなっていったんです。『僕なら、まだやれる』と思いつつも、結果が残せない。歯がゆい気持ちでした」

 

 また、新世代のほとんどの客にとって、「ホストの一条蘭」というネームバリューはないに等しかったことも時代の変化を感じたうちのひとつだった。

 さらに、みずからが確立していた「お店でしか会えないホスト」という営業スタイルも通用しなくなっていた。

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「当時、すでにLINEなどのSNSなどが出始めていたので、それらを駆使したホストの営業活動が一般化しました。同伴、アフターをせず、店でしか会えない男という営業スタイルだった僕は、それに対応できませんでした。なので、常に連絡を取り続けている今のホストたちは、ほんとにすごいと思いますよ」

会社にも借金する生活苦

 こうした状況ゆえに、一条氏の生活も破綻していく。当時、一条氏の給料体系は考えられない破格のシステムで、売上がなければ給料がゼロになるくらいのハイリスクハイリターンの条件だった。

「30代で売り上げが落ちると生活ができないレベルになりました。会社にも借金をするほど生活苦に陥ってしまいましたね。それで、もういよいよダメだなと思って、プレイヤーを辞めて内勤になりました」

プレイヤーを降り、運営側に回った

 内勤になってからの最初の2年間の仕事はつけ回し(ホストをテーブルに配置すること)。その後、キャッシャー(レジ)などのお金の管理を行った。

「内勤の給料は固定で30万円。プレイヤーの晩年は、これより稼げていなかったので、むしろ給料は上がりました」

 とはいえ、長年プレイヤーとして、ピーク時は月4桁近くもらっていたのだから、多少なりとも手元に残ってはいなかったのだろうか。