新宿・歌舞伎町。ホストクラブが軒を連ねるこの街で、トッププレイヤーとして名を馳せたホストがいる。そのホスト、一条蘭氏(42)は23歳で1000万プレイヤーとなり、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。

 だが、そんなトッププレイヤーでもいつかは第一線から退くときがくる。一条氏にホストとして業界トップに上り詰めた瞬間、プレイヤーを辞め“屈辱”を味わった瞬間をそれぞれ聞いた。(全2回の1回目/続きを読む

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一条蘭氏

「一条蘭と申します。よろしくお願いします」

 歌舞伎町にあるホストクラブ「CLUB ALF」のテーブルに颯爽と現れた一条氏。「CLUB ALF」が所属するホストグループ「AIR GROUP」の「職業、イケメン。」というキャッチコピーにふさわしい顔立ちだ。

 AIR GROUPは歌舞伎町を中心に、大阪、名古屋、札幌、福岡でお店を運営しており、ホストクラブのグループとしては業界トップクラス。現在、「CLUB ALF」のマネージャーを務めている一条氏は、同グループ躍進の立役者とまで言われた人物だった。そんな彼は一体どんな経緯でホストを辞めることになったのだろうか。

「そもそも、僕はホストをやる気はまったくなかったんです。高校卒業後、地元の山形から上京してきてガソリンスタンドで働いていました。実家が裕福ではなかったので、専門学校への進学など自分の選択肢を広げるために、とりあえずお金を貯めたいと思っていたんです。それで2年くらい働いたら100万円以上貯まって、そろそろ地元に帰ろうと。当時の給料は寮の家賃を引かれて、手元に残るのは10万円程度だったのですが、全然遊んだりしなかったので、貯金は順調にできたんですよ」

「俺と一緒にホストをやらないか?」

 ただ、実家に帰る数日前に運命の出会いが訪れる。

「お前、かっこいいから俺と一緒にホストをやらないか?」

 昼間に渋谷のスクランブル交差点を歩いていたところ、真っ白なスーツを着た金髪の男から声をかけられたのだ。

「聞けば、埼玉でホストをやっていた男性で、これから歌舞伎町でホストをやると。でも、僕はその場で突っぱねたんです。その男性への第一印象もよくなかったですし、ホストそのものにあまりいいイメージを持っていなかったので。ただ、一応電話番号だけ交換したら、後日『お前なら絶対できる』みたいに、すごくアツく勧誘されたので、一回くらいいいかなと。そのくらいの軽い気持ちでホストを始めたんです」