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遭遇した“修羅場”とは

 こうした実績から、一条氏はしばしば「AIR GROUP躍進の立役者」と評されることも多いが、本人としては、その自覚はないという。

「僕自身はそれなりに売上を立てられて、雑誌にも載せてもらったりしましたけど、当時の代表(現ATRグループ会長、桐嶋直也氏)が背中を押してくれたのが大きいです。当時、ホスト業界では珍しかった、音楽ユニット『A.G.E(エアーグループエンターテイメント)』の選抜メンバーでセンターも務めさせてもらい、CDデビューも経験しました。こうして周りのおかげで自然と『一条蘭』という名前が歌舞伎町に浸透していったんです。グループを背負っているという感覚はなかったです。ただ、振り返ると、そこが僕のホスト人生のピークだった気がしますね......」

 ホストといえば、近年女性客とのトラブルが報じられるケースがある。一条氏にはこうした“修羅場”はあったのだろうか。

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「なんもないですよ。『彼女にしてほしい』とかは言われましたけど、僕は店外で会わないので、そこらへんの線引きはきっちりしていました。一回、僕のお客さんが会社のお金を横領して遊んでいたことがあって、お店に会社から電話がかかってきたことはありますね。一方で、お客さんの売掛金を回収できなかったこともあって、僕の誕生日で400万円のシャンパンタワーを入れてくれたお客さんに飛ばれたことがありました。そういう飛ばれた売掛金は、高級外車3台分くらいですかね......」

ホストのてっぺんとどん底を味わった

 売掛金とは、ツケ払いのことだ。客の代金をツケとして、店やホスト自身が立て替え、後日返済してもらうシステムである。

「お客さんから『ごめん、返済期限に間に合わない』『明日、持っていく』『体調が悪くて行けない』と連絡があり、次第に連絡が取れなくなるパターンが多いですね。誕生日のときの400万円が金額として一番大きくて、あとは100万円ほどがちょこちょこありました。ただ、飛ばれる側の自分にも原因があるという感覚もありました。なので、売掛で回収できなかった金額は、ホストとしての勉強代だと思っています」

 こうして順風満帆なホスト人生を歩んでいたように見える一条氏。しかしーー。

「僕はホストのてっぺんを味わったあと、考えもしなかった“どん底”を経験することになったんです」