──都内で長く1人暮らしをされていて、千葉の実家に帰ることに抵抗はなかったですか?
にしおか めちゃくちゃ抵抗ありましたよ! 帰る準備をしてるときも「やだぁ~、絶対帰りたくないんだけど!」と思ってました。腹がくくれていたわけでもないけど、母の様子は認知症の知識がない私でもすぐに“なんかおかしい”と思うレベルでしたし。うちは母がずっと大黒柱でした。その母が立ち行かなくなったら「あれ、これから3人どうするんだろう?」って。
──芸能界のお仕事は都内も多いと思うので、関東とはいえ仕事に影響があったのではないでしょうか。
にしおか もともと一発屋だし、浮き沈みは何回も経験してるから、仕事が減るとかで思い詰めたりとかはなかったです。そもそも当時はそんなに仕事があるわけでもなくて、引っ越しも少し小さいところへ移ろうと思ってたくらいですし。でも文章を書く仕事だったら、実家でもできるかなとかは考えていました。もちろん、それだけで簡単に生活できたりはしないんですけどね。
「誰だって認知症になったら不安だし怖いじゃないですか」
──ご実家に戻られて現在4年。「あのとき一緒に住むと決めてよかったな」と思いますか?
にしおか 何とも言えないです。母がよく笑うようになったので、一緒に笑えた時はホッとしますね。 母と姉と私の3人でよくトランプのババ抜きするんですけど、ババ抜きって3人でしてもおもしろくないじゃないですか。でも母と姉はすごい笑うんですよ。そういうのってちょっと幸せだなと思ったり「なんかいいな、悪くないな」と感じます。しかも姉はババを手札の上に出すから、絶対ババってわかっちゃうし(笑)。
──そう聞くと幸せな時間に感じます。現在、お母様の認知症はどんな状況なのでしょう?
にしおか 今ちょうど要介護認定の手続きを進めていて、この間、申請を出しにいったんですよ。
――ご本人は病状についてどんなふうに認識しているんですか?
にしおか 「自分は認知症じゃないと思ってる」ように見えるときもあるし「自分が認知症だとわかってる」と思うときもあって、日によるんですよね。私も直接聞いたことはないので、本当はどうなのかわからないんです。
でも、誰だって認知症になったら不安だし怖いじゃないですか。だから普段はどっかで押し込めて、本当に忘れてるんだと思うんですよ。だけどやっぱり前と同じように生活できなくなってることに直面すると、その押し込めたフタが開いちゃうのかなって。