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「ママはちゃんとしたほうがいいのかな? それともボケたほうがいいのかな?」

――本当に、理解したり認めたりするのが難しいご病気ですよね。

にしおか でもね、何であれ、母はいつも真剣ですよ。

 私が要介護認定の申請をしに行くときに「ママの健康状態を見に来る人がいるから、その予約を取ってくるね」と説明したんです。そしたら「その人が来る日はママはちゃんとしたほうがいいのかな? それともボケたほうがいいのかな?」って聞いてきたんですよ。「いつも通りでいいよ」とは返したんですけど「おや、そんなコントロールができるのか?」と(笑)。

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──認知症を演じるかどうかのご提案を……?

にしおか たぶん母は「認定を受けられれば家族が何かラクになるんだろう」って思って、そのために自分がボケてるほうがいいのかなって考えたんですかねえ?

 認知症の診断を受けてからもう4年くらい経つんですけど、こんなふうにしっかりしてるときは「やっぱり誤診だったりしないかな?」って思ったりするんですよね。そんなわけないし、自分でも往生際悪いなとは思うんですけど。

 

──難しい質問ですが「今の生活が続けられなくなるかも」と考えたりすることはありますか?

にしおか どうなったらダメになるのかは、実はあんまりわかんないんですよね。実家に戻ってすぐの頃は「これ以上母がいろいろ忘れちゃったらどうなるんだろう」って思ってたけど、それから症状が進行した今でも、バタバタですけど生活は成り立ってますし。

──では「介護が苦しくてやめたい」と思うことも?

にしおか あんまり介護してるっていう意識がないんですよね。今はまだ、迷子になったり、寝たきりっていうわけでもないから「とりあえず見守ってます」みたいな状態というか。「家事で疲れたなぁ」と思うことはよくありますけど、 介護をやめる・やめないっていう考え方がそもそもないかもしれないです。

──確かにお聞きしていると、介護しているというよりも「ただ一緒に住んでいる」感じがします。

にしおか あ、本当にそれです。ただ一緒に住んで、ただ一緒に疲れてるみたいな。

──それってどの家庭でもあることですもんね。ただ、疲れが伴うなかでもご家族に優しくできるにしおかさんは本当にすごいと思います。そうしたくてもできない、という人も多いのではないかなと。

にしおか 私も、優しくできないときなんて山ほどありますよ。でも無理をせず、できる範囲でいいと思うんです。やっぱり「自分ファースト」が大事だと思うし、自分が元気じゃないと家族も幸せにできないから。

 だって……私は今49歳、もうすぐ50歳の元女王様キャラの一発屋の独身女性がですよ? 自分に優しくしなかったら誰が優しくするんですか!(笑) だからまずは自分に優しくしようと思ってます。

ポンコツ一家2年目

にしおか すみこ

講談社

2024年9月20日 発売