「単に兵站や基地を提供するだけではなく、『統合された軍事力を持った日本』でなければなりません。それが私のビジョンです」

 かつてトランプ政権で「外交・安全保障」分野のブレーンとして活躍した、元国防次官補代理のエルブリッジ・コルビー氏。第二次トランプ政権でも要職への任命が予想される同氏が、対中戦略に向けて同盟国の「日本」に求めることとは? 新刊『アジア・ファースト 新・アメリカの軍事戦略』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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日本は主体的な防衛力を持て

 第二次世界大戦以降のアメリカの取り決めは、日本を作戦の拠点とし、自衛隊は日本列島の自衛に専念するというものでした。しかし、そのような形ではもう十分ではありません。今後の防衛のモデルには、自国の防衛を主体的かつ積極的に遂行でき、アメリカと対等に活動できる日本が必要なのです。つまり単に兵站や基地を提供するだけではなく、「統合された軍事力を持った日本」でなければなりません。それが私のビジョンです。

 つまり、米軍と自衛隊を統合された勢力にして行きたいということです。これは日本政府側にも共有されており、すでにその方向に向かっていると思います。

 日本の運命は、人民解放軍が日本の海岸に到着する頃には、本質的に終わっているはずです。つまり、アメリカ海軍が東京湾に到着する前に、もう決着はついてしまっているわけです。だからこそ、日本国内での活動においては、兵站などは日本の自衛隊が主導的な役割を果たし、戦闘活動も行うべきです。

 このような事態が想定できるからこそ、私は自分の考えを日本のメディアや日本の政府関係者、専門家たちに繰り返し語ってきました。日本は国防への心構えをシフトさせることがまさに必要であり、これはロシアの脅威に直面しているドイツ以上に必要とされていると考えています。

 冷戦時代、西ドイツは非常に大規模な軍隊を保有していました。アメリカと比較すれば小さかったものの、陸軍の規模は大きく、国防費も巨額で、海軍もあり、それによって国を守っていました。

「外交・安全保障」分野において、トランプ氏を支えたコルビー氏

 もちろん、日本が当時の西ドイツのようになるべきだとは思いません。これはあくまでもひとつのモデルだからです。それでも日本は米国とほぼ同等の役割を果たし、全プロセスにおいて日米の防衛部門が完全に統合されることが望ましいでしょう。それは、技術開発や弾薬の生産などを共同で行うことなども含まれてきます。