2022年の初頭、ツイッターの買収を密かに計画していたマスク。
ポリコレやウォークに席巻されたツイッターが、右派の不平や不満をおさえ過ぎている、言論の自由が多ければ多いほど民主主義にとっていい、と考えていた。
トランプのことはあい変わらず嫌いだったが、元大統領がツイッターから永久追放されるのは違うと考えた。ツイッターの検閲制度はおかしいと、テック系リバタリアンの友だちにも後押しされた。
ちなみに、マスクがアンチ・ポリコレ、アンチ・ウォーク、反民主党的な価値観を加速させた理由のひとつに、愛する息子(現・娘)が、性転換手術を受け、急進的な社会主義に傾倒。大金持ちである父親のマスクを拒絶したことへの悲しみもあった。
恋人から「なにそれ? 4ちゃんででも拾ってきたの?」と言われ…
この年のあいだ、マスクの政治態度は揺れ動く。
「私が支持するのは共和党の左半分と民主党の右半分だ!」
とのツイートを行いつつも、実際には右傾化が深まり、周りに驚かれる。右翼系のミームや陰謀論をマスクから受け取った恋人のグライムスは、こう返したという。
「なにそれ? 4ちゃんででも拾ってきたの? 極右にそっくりな物言いになってるよ?」
やがて周知の通り、マスクは陰謀論めいた発信を行うようになってゆく。
そして今から思うと決定的とも言える一言が、同年4月にマスクの口から飛び出していた。
ツイッター買収をまとめていた同年4月の金曜日、ロサンゼルスのウェスト・ハリウッドの屋上レストランで、マスクは息子4人と夕食をともにしていた。ツイッターをあまり使わない息子たちは、なぜ買収したのかとマスクに尋ねた。
「あらゆる人を歓迎する公共広場がデジタル世界にあって、みんなに信頼されているというのは大事なことだと私は思うんだ」
「そうじゃなきゃ、2024年のトランプ再選なんてまず無理だろ?」
軽口を飛ばすマスク。子どもたちがぎょっとなったのに対して
「冗談だよ、冗談」
と、笑ったそうだ。しかし、2024年となった現在、それは冗談ではなくなった。