10月から放送中の『民王R』(テレビ朝日系列・毎週火曜21時~)。作家・池井戸潤氏の小説『民王』をもとに「Inspired by 池井戸潤」という新しい手法で製作されたこのドラマは、現職の総理大臣が5歳児から老人までさまざまな国民と入れ替わるという奇想天外な展開。加えて、日本の政局、米大統領選などの海外情勢、さらに闇バイトやひとり親の子育て、青少年の孤独など、現代社会のさまざまな問題・課題にスポットを当て、放送のたびに話題を呼んでいる。

 実際に起こった事件のようなリアルな出来事、どこか見覚えのある(?)キャラクターと、まるで現実社会を予言しているかのようなストーリーはどのように作られ、そして、どこに向かおうとしているのか? プロデューサー・飯田サヤカ氏に尋ねた。

テレビ朝日・飯田サヤカプロデューサー ©文藝春秋

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もはや現実世界がドラマを後追い?

 とにかく“持ってる”作品である。遠藤憲一演じる現職の総理大臣・武藤泰山が毎週、さまざまな立場の国民と入れ替わることから引き起こされる騒動を描く『民王R』の放送開始は、衆院選を直前に控えた10月22日。いやおうなく政治に注目が集まるタイミングだった。

 総理が貧困にあえぐ若者と入れ替わる第2話で扱ったのは、今やニュースに上らない日はない闇バイト問題。さらに5歳児と入れ替わった第3話の放送は、米大統領選でトランプ氏の劇的な再選が決まった頃。すると、ドラマに登場する米大統領の姿が、まるでどこかで見たような……。

「そうなんですよねぇ(笑)。『民王R』をやることが決まったのは随分前で、11月に米大統領選があるということは意識していましたが、日本の総選挙についてはまったく予想していませんでしたし、そのほかの出来事も……。今回、『民王』の原作者である池井戸潤先生から、物語の枠組みを使って自由に作ってというお許しをいただき、監督や脚本家と『最近、何に関心ある?』と話し合う中から毎回のテーマを設定してきたので、自然と同時代性が滲み出てきたのかもしれません」

民王Rドラマ

 それにしても、米大統領しかり、泰山を追い落とす人気と勢いを持ちながら独特の“構文”トークで周囲を煙に巻く与党のプリンス議員・白鳥翼(溝端淳平・演)しかり、実在の人物を思い浮かべずにはいられないキャラクター造形。そもそも池井戸氏の原作の『民王』自体が、漢字の読めない総理大臣(過去に誰やらいたような)が実は息子と入れ替わっていたという設定から始まっており……これらキャラクターも、やはり「Inspired by(影響を受けた)」?