「まぁどう見ても……と言ってしまうと怒られそうですが(笑)。とくに第1話の放送は総選挙の期間に被っていたので、実在の人物を模した表現にならないよう微調整して、ギリギリのところに落ち着きました」
泰山と入れ替わる人物は、「遠藤さんが演じて面白いように」と5歳児からお年寄りまでと幅を持たせて設定。職業や立ち位置もバラエティーに富んでいる。
「当初はアイドルと入れ替わるとか、文春の記者と入れ替わるアイデアもあったんですよ(笑)。過酷な役柄を課してしまっているにも関わらず、毎回全力で取り組んでくださる遠藤さんは本当にすばらしいし、泰山の秘書・冴島優佳を演じるあのちゃんは、9年前の『民王』を見ていて『やりたい!』と志願してくれました。体制におもねらず言うべきことを言う優佳のキャラクターは、彼女自身に負うところが大きいと思います。明るく憎めない泰山の書生・田中丸一郎太役の大橋和也さんも、ご本人が本当に天使のようで。金田明夫さん(官房長官・狩屋孝司役)や山内圭哉さん(公安刑事・新田理役)らベテラン勢と一緒に楽しんで演じてくださっています」
闇バイト、ひとり親、トー横キッズ……若き製作陣が現代を映す
実は、『民王R』の製作にあたっては、池井戸氏から製作陣に1本のプロットが渡されていたという(→「テレビドラマ界を、そして日本を世直しする一作に」作家・池井戸潤×俳優・遠藤憲一)。
「泰山があるひとりの労働者と入れ替わってその生活を体験し、日本の経済や市井の貧困について知る……という、現代版『王子と乞食』のような筋立てでした。ただ、現代には女性の貧困や子どもの貧困など、さまざまな層の貧困や孤独があるので、それをさまざまな層に切り分けて1話完結の物語にしてはどうか? と提案して、連作短編のようなドラマになったんです」
闇バイトに手を染める若者の苦悩、ひとり親の奮闘、シニア世代の後悔……最新の第5話では、繁華街に身の置き所を求める「トー横キッズ」を思わせる10代の孤独がシビアに描かれ、放送中からXには同世代を中心とした視聴者から熱い共感コメントが寄せられた。より“今”にフォーカスしたテーマ設定は、30代から40代と、ドラマ界においては比較的若手の脚本家と監督との対話から生まれたという。