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転倒事故で負った重傷

 その約束が果たされたのは24年後の2020年11月、森は日本選手権で悲願の初優勝を成し遂げた。表彰台で言葉を詰まらせながら思いを語った。

「やっと約束を守れてよかったと思います」

©TBS 提供:公益財団法人JKA 川口オートレース

 だがそれから82日後、森はレース中に落車。骨盤や腰椎、肋骨を骨折し、繰り返された手術で体に24本のボルトを埋め込むほどの重傷。一生歩けないかもしれない。そんな深刻な事故から7か月後、本作の監督を務める穂坂友紀が、TBSの番組向けに森をインタビュー取材する。まだ歩行もままならないのに力強く「復帰します」と宣言する森の人間性にほれ込んだという。そこから密着取材が始まり、映画へと結実する。レースに復帰したいという原動力は何なのか? 穂坂に尋ねられて森は言い切る。

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©TBS

「好きだから……しかないと思うんだけどなあ。オートレースがただ単に好きだから」

「そう簡単にあきらめるわけにはいかない」

仲間たちからのメッセージ

 くじけそうになった時は、SMAPの仲間たちからのメッセージに力づけられた。香取慎吾、中居正広らメンバーたちの言葉はもちろん、彼らの曲にも励まされたという。

「SMAPの歌にも出てくるじゃないですか。あきらめたら終わり、とかさ」

 森がまだSMAPメンバーだった頃の曲『オリジナル スマイル』には、こんな歌詞がある。

〈山程ムカつくこと 毎日あるけど 腐ってたら もうそこで終わり〉

©TBS

 これに近い言葉がよく知られている。人気漫画『スラムダンク』で、バスケ部監督安西先生のセリフ。

「あきらめたら そこで試合終了ですよ」

 もう無理だと思ってあきらめてしまいたくなることは誰しもあるだろう。どこかで踏ん切りをつけることが必要な場合もあると思う。でも、あきらめずにしつこくやり続けていると、もしかして道が開けるかもしれない。その際に重要なのは、自分を信じる「自信」ではないか。森はこう語っている。

「まだ自信を失ったわけではないので。まだ走れるって自分で信じてるんで。やめる時はたぶん、自信がなくなった時だと思うんです」