かつて24時間覚醒剤が買えることで知られていた、大阪の西成区。ところが2012年に状況一変。当時大阪市長だった橋下徹氏によって、西成の闇の部分は徹底的に浄化された。しかし中には、それでも覚醒剤を売り続ける「ナゾの人物」も…。
その実態を、フリーライターの花田庚彦氏の新刊『大阪 裏の歩き方』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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浄化作戦後の西成
「西成だったら、いまも覚醒剤を買えるのか」
筆者が西成を定期的に取材していると言うと、かなりの確率でこう質問される。かつてこの地域は、24時間覚醒剤が買えることで知られていたからだ。
太子の交差点を中心に売人が数メートルおきに立ち、車でドライブスルーのように覚醒剤を買える街。古くは太子プラザや踏切脇、オーシャン前、コインロッカー前などの売り場が有名で、覚醒剤愛好家は「あそこのネタは品質がいい」「あそこは量が多い」などと、ネットや口コミで情報交換をしていた。関西はもとより、日本全国から覚醒剤を求める人間が集まった。
それが一変したのが、2012年から始まった大阪市による西成浄化作戦以降だ。当時大阪市長だった橋下徹が目玉政策として西成特区構想をぶち上げ、西成の闇を徹底的に取り締まったのである。
それでも、筆者が2、3年前に取材した際には、覚醒剤の売買は細々と行われていた。街角に売人が立っていることはなかったが、知り合いの紹介があればドヤを拠点とする売人から買うことができたのだ。
では、それから数年経った現在はどうなっているのであろうか。
以前、取材した売人の携帯電話に電話したが、“現在使われておりません”と空しいアナウンスが流れる。
「前はドヤとかに売人がおったけど、パクられたりして壊滅したな」
覚醒剤などの裏事情に詳しい人間に話を聞くと、そんな答えが返ってきた。どうやら、かつての売人は絶滅状態にあり、西成でシャブを買うことは難しくなったようだ。
もっとも、全く手に入らないかというと、そうでもないらしい。
「まあ、ベトナム人とか外国人が、持っていることは持ってるな。けど彼らはよほどのことがない限り直接日本人には売らへん。ホンマに知りたいんやったらベトナム人紹介できるで」