「不法滞在になっても日本に残って、いままでにつくったネットワークを太くしたり、お金持ちの人脈をつくりたい。強制送還になるまで続けるつもりだよ」

 技能実習生として来日したベトナム人が、西成で違法薬物を売り続ける理由とは…? フリーライターの花田庚彦氏の新刊『大阪 裏の歩き方』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

かつて技能実習生として働いていたベトナム人はなぜ西成で違法薬物を売るのか…? 写真はイメージ ©getty

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ベトナム人の技能実習生が「違法薬物の売人」になった理由

 では、大国町に行けば一般人がシャブを買うことはできるのか。

 グェンは「買えない」と即答した。売人が移り住んだといっても、浄化作戦後であるから、数は多くない。かつて覚醒剤などを仕切っていた暴力団も、逮捕リスクの高さから末端に売ることも避けているようだ。グェンにしても、仕入れた違法薬物のほとんどは仲間内で安く売って遊んでいるだけだと話す。

 ただし、グェンは知り合いの紹介であれば、日本人にも売ることがあるという。給与だけではやっていけないので、違法薬物を売買して、生活の足しにしているとのこと。だが、生活の足しと言いつつ、薬物の月の稼ぎは給与を超えているという。

「一番売れるのは大麻、次にMDMA、覚醒剤は人気がない」

 かつて西成で一番人気の違法薬物は、覚醒剤であった。大麻は覚醒剤を抜くときのおまけくらいの位置づけであったが、人気は逆転していた。

 グェンが違法薬物の売買を始めたのは、1年前。ベトナムでも違法薬物をやっていたので、日本での転落も早かった。バイト先で日本人の先輩から大麻を勧められたのがきっかけでユーザーになると、いまでは売人として、大麻だけでなくMDMAや覚醒剤のバイヤー、つまり売人にもなった。

 グェンは5年間日本に滞在できる資格を持っているが、5年経っても母国のベトナムに帰る気はないという。