テレビで最初に詳しく報じたのは…
テレビで最初に詳しく報じたのは11月24日放送のフジテレビの「日曜報道THE PRIME」。フジは25日の「めざまし8」でPR会社社長が「選挙カーの上から臨場感を届けるためのライブ配信」をする様子の画像などを取り上げて、若狭勝元東京地検特捜部副部長や弁護士でもある橋下徹・元大阪市長が解説したが、2人とも斎藤氏の弁明は説得力に乏しいとした。
テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」もPR会社社長がインスタグラムにアップした、斎藤氏がこの会社の事務所を訪れた時の写真を放送。社長が斎藤氏の選挙カーの上にあがる動画なども報道した。夕方ニュースも民放各社はトップで報道し、NHKも「ニュース7」で「知事が違法性を否定」と伝えた。
取材に対して、当のPR会社社長は応じず、選挙期間中に社長が街頭演説などの現場で活動していたのは「あくまで(公職選挙法に違反しない)ボランティア」と斎藤氏の代理人弁護士らは口を揃えている。だが、報道で元検事らの話を聞く限り、いずれ「公職選挙法違反」の容疑で捜査が進む可能性は否定できない状況だ。
「テレビ不信」をもたらした報道の穴
公職選挙法違反の疑いへとフェーズが変わってからも、横並びの報道姿勢が目立ったが、テレビは実際に候補者や選挙カーが街頭を回る選挙期間中になると、より公平・中立な取扱いを慎重にしようという意識が強くなる。ニュース番組でも各候補や政党の主張をほぼ同じ時間だけ伝える定型的なニュースしか放送しなくなるのが通例だ。当選の可能性が高い候補も、ほぼ間違いなく落選しそうな泡沫候補も同じように時間を割くため、メリハリがなくなってしまう。選挙期間前にはさんざん詳しく報道していた問題も同様だ。
なぜ斎藤氏が失職したのか、失職の背景になったパワハラやおねだりの疑惑、内部告発者への処分などについても選挙が始まるとストップして、詳しい経緯が伝えられなくなる。選挙ニュースでは情勢や選挙活動で各候補の主張だけを伝える。結果的に視聴者からすれば、たくさんの情報から投票する候補を選びたい一番肝心な時に、詳しい情報を流さず、重要な事実をわざと隠そうとしているのでは? そんな「テレビ不信」につながっているのではないか。