11月17日に投開票が行われた兵庫県知事選はテレビや新聞にとって想定外の結末で、失職した斎藤元彦前知事がまさかの再選を果たした。テレビ各社は「背景にSNS」という解説を繰り返している。制約がほとんどないSNS。制約が多いテレビや新聞。決定的な要因としてSNSの影響力があったという見立てはどの大手メディアでも一致している。
さらに兵庫県内のPR会社の社長が11月20日、斎藤陣営で「広報全般を任せていただいていた立場」とnoteに投稿し、公職選挙法違反の疑いへと世間の関心は大きく動いた。
テレビ報道を研究する上智大学の水島宏明教授が、一連の報道を振り返る。(全2回の2回目/前編から続く)
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選挙後の“疑惑”をテレビ各社は当初大きく取り上げなかった
テレビや新聞が報じない大きな「穴」。それを有権者がSNSで埋めようとした結果として斎藤元彦前知事の圧勝につながった。
だが、選挙の後になって斎藤陣営をめぐる疑惑が浮上している。
PR会社の女性社長が斎藤陣営の戦略的広報を「監修者」として中心的に行っていたのは自分だとnoteで公開したことが発端だった。
運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定、校正・推敲フローの確立、ファクトチェック体制の強化、プライバシーへの配慮などと非常に詳しく記してある。
斎藤氏本人も代理人弁護士もPR会社に委ねたのは「ポスター制作だけ」だとして違法性を否定しているが、PR会社の社長のコラムの表現とは大きく矛盾する。共同通信が11月22日に配信したのにテレビ各社は当初大きく取り上げなかった。