良くも悪くも、地方自治体の首長がこれほど注目されるのは珍しい。
兵庫県の斎藤元彦知事は今、辞職を迫る圧力に晒されている。今年3月、県庁の幹部職員が、知事のパワハラや「おねだり」疑惑などを告発した。すると、これを斎藤氏は「嘘八百」「公務員失格」と厳しく糾弾。その後、幹部は自殺するが、告発を裏付ける音声データが発覚した。さらに最近、もう一人の職員も自殺していたことが明るみに出た。斎藤氏は続投したいようだが、その包囲網は狭まっている。
今年7月の東京都知事選も異様だった。小池百合子知事の学歴疑惑に加え、過去最多の56人が出馬、選挙と関係ないポスターが張られる混乱もあった。だが特筆すべきは、勝者でなく敗者が、その後も関心を集めていることだろう。
約165万票を獲得し、2位となった石丸伸二・前安芸高田市長は、開票特番のやり取りが物議を醸した。質問に正面から答えず、冷笑し、高圧的とされ、「石丸構文」なる言葉も生んだ。これに本人は、ネットメディアのインタビューで「僕、常にコミュニケーションの基本としてミラーリングするんですよ。善意に対しては善意で返すし、敵意に対しては敵意をちゃんと返す」と答えた。
また、まさかの3位で敗れた蓮舫氏への批判も止まない。曰く、「日本共産党との連携が嫌われた。演説も攻撃的で批判ばかりで、ゆとりやユーモアがない」。余りのバッシングに、女性蔑視の声まで出る。これに本人は、自身のX(旧ツィッター)で「私はね。黙らないよ。いま、最も自由に黙らない」などとコメントした。
こうした声にどう向き合うかで、今後の人生が変わる。それに格好の教訓を与えそうな男がいる。「庶民宰相」と呼ばれ、今も愛憎相半ばする気持ちを抱かせる昭和の政治家、田中角栄だ。その足跡は斎藤氏や石丸氏、蓮舫氏とは大きく異なる。