そうした「穴」があるなら、より信頼性が高いテレビや新聞などが工夫してその「穴」を埋めていけばいいのではないか。それは今後、可能なのだろうか。だが、今のところ、「総論」で問題意識を伝えながらも、具体的な「各論」に踏み込もうとするテレビ番組はない。
テレビは次の選挙をどう報じるのか?
次の選挙でのテレビの報道のあり方。このヒントになるようなスタジオ討論が11月19日放送の「めざまし8」で交わされた。キャスターの谷原章介氏と元放送作家の鈴木おさむ氏、元NHK記者の立岩陽一郎氏の3人の会話だ。
「SNSと選挙について、今回は考える良いきっかけになった。SNSがうまい人と下手な人と、(既存)メディアって、テレビって選挙期間中は何もできないなかでSNSだと自由に発信できるし、そういうものがうまい人と使わない人の差がすごく出てしまう」(鈴木おさむ氏)
立岩陽一郎氏は元NHKの敏腕記者で骨太の調査報道にも携わってきた。特に選挙のファクトチェックでは、どれだけ労力がかかるか身をもって知り尽くしている人物だ。
「テレビや新聞が敗北したという評価をする人もいる。(略)もっとテレビや新聞が選挙の時にやれる方法があるわけです。もっとやれ、もっとやってほしい。SNSに関して懸念を示すと何が起きるか? 政府が介入してきますよ。そうするとさらに言論空間がきわめて歪なものになる可能性がある。(略)自由な言論空間を守るということはやはり大事だということは、ちょっとみなさん意識してほしい」(立岩陽一郎氏)
立岩氏はSNSの影響の拡大は政府の介入につながりかねないという強い危惧を示す。「自由な言論空間」を守るべきだという主張だ。その上で「もっとやれ」と積極性を促している。
筆者は鈴木おさむ氏と立岩陽一郎氏の議論をとても興味深く聞いた。SNSの影響の拡大に驚きを示しながらも安易な規制を戒め、これを育てる方向に育てようとする。テレビに 「もっとやれ」「もっと踏み込んでほしい」と鼓舞していた。