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先進国の為替介入は“禁じ手”とされていた

 各国当局者と慎重に協議をしなければならなかったのは、先進国による為替介入が国際金融の現場においては、“禁じ手”とされるようになっていたからだ。為替操作へのアメリカの対応は厳格化されており、IMF(国際通貨基金)においても為替介入を厳しく限定する方向にあった。

 だが、近い将来に出来する危機に備えて、神田氏は粛々と準備を進めていった。

数々の国際会議に参加 ©時事通信社

〈多くの財務官レベルの会議に加え、ワシントンDCでのG7やG20財務大臣・中央銀行総裁会議、あるいは、ローマG20首脳会議のマージン(隙間時間)でも、主要国の財務省や中央銀行、国際機関の理解を求める作業を続けた。長い調整の始まりだ〉

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ウクライナ侵攻、中東紛争…不測の事態への対応

 11年ぶりとなる為替介入の裏では、水面下での地道な努力によって着々と準備が整えられていたのだ。その一方で、ロシアのウクライナ侵略や、中東での紛争勃発など、地政学的リスクが火を吹くこととなる。こうした不測の事態にも、ミスター円は翻弄されていった――。

「文藝春秋」1月号(12月10日発売)及び、「文藝春秋 電子版」に掲載されている短期集中連載「ミスター円、世界を駆ける」では、ロシアがウクライナに侵攻した当日、OECDのコーポレートガバナンス委員会で議長として迫られた決断、ハマスのイスラエル攻撃によってG7財務大臣・中央銀行総裁会議で共同声明がご破算の危機を迎えた経緯など、これまで明かされることのなかった国際金融の世界の内幕が詳しく描かれている。

文藝春秋

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ウクライナ、ガザ……そのとき国際金融の現場で何が起きたか