フードコーディネーターとして活躍する長藤由理花さん(32)は、27歳のときに卵巣がんが発覚。抗がん剤治療の影響で妊娠も難しいと言われたが、奇跡的に妊娠。そして現在、3歳のお子さんの子育て中の長藤さんに、がん発覚から闘病生活について、また当時の仕事や恋愛についても話を聞いた。(全3回の3回目/1回目から読む)

フードコーディネーターの長藤由理花さん ©細田忠/文藝春秋

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子どもを諦めた矢先に判明した「奇跡的な妊娠」

――卵巣がんの治療による妊娠への影響について、当時のパートナーの方にも伝えていたのでしょうか。

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長藤由理花さん(以降、長藤) 治療中にその話は一度もできなかったですね。彼のことを思えば早めに伝えたほうが良いと頭ではわかっていましたが、結婚の話すら出てない相手にどういう言葉で伝えればいいのかわからず、結局、何度も言おうとして飲み込んでしまって。

 彼に限らず、そのことはほとんど誰にも言えず悩んでいました。

――お友だちにも相談せずにいた?

長藤 当時27歳で、SNSを開けば皆から結婚や妊娠の報告があって、そういうライフステージにいる彼女たちに自分の状況を話すことができなかったんです。自分も余計つらくなる、というのもあったと思います。

――その後、当時のパートナーの方と結婚されたそうですね。きっかけは?

長藤 抗がん剤治療の影響で妊娠が難しくなったという事実がわかったとき、とにかく落ち込んだんです。

 で、落ちて落ちて落ちていったその後に、「子どもを持てなくても彼となら楽しい人生が送れるかもしれない」と思えたタイミングがあったので、その事実と結婚したいという気持ちを伝えました。そしてその3か月後に、まさかの妊娠が判明したんです。

 

出産で入院したときに、辛かった抗がん剤治療のトラウマが…

――不妊治療をされていたわけではなく?

長藤 そうなんです。子どもを持たない人生でも彼と生きていこう、と思っていた中だったので、不妊治療もしていませんでした。

 だから最初、妊娠じゃなくて閉経したと思ったんですよ。

――病院から、「卵子の数が50代女性と同じくらい」と説明されたということでしたよね。

長藤 そうです。だからもう本当にビックリしましたね。

 病院で妊娠が分かった時、ちょうど彼から「今日飲み会行ってくる」とLINEが来たので、「お願いだから今日はまっすぐ帰ってきて」と返事しました(笑)。