過ぎ去った時代に焦がれるあまり、その不便さすら愛してしまった者たちがいる。維持の手間など百も承知、旧車の魅力に憑かれたオーナーの素顔に迫る!

 今回は「ハチマルミーティング 2024 at FSW」の出展者から、3代目レックスに乗る「まつぼ」さんをご紹介。

サーキット仕様のレックスを「日常の足」として使っている「まつぼ」さん

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「本当の趣味」に目覚めたら

 もともと車にはあまり興味がなかったんですけど、前の職場にスポーツカーに乗っている先輩がいて、山に連れて行ってもらったことがあるんです。それがかなり衝撃的で、「車ってこんな風に動くんだ」と感動してしまい、自分でも走りのいい車に乗ってみたくなったんですよね。

 その後NAのロードスターを買ってから、どんどん運転が楽しくなってきて。ドリフトもやってみたかったので、次はもう少しパワーのある32のスカイラインに乗り替えて、サーキットにも通うようになったんです。

1986年から1992年にかけて生産された3代目のスバル・レックス

 月イチくらいのペースではありますが、タイヤ代やガソリン代もかかりますし、給料はほとんど車に使うようになりましたね。車に興味を持つ以前は、音楽やお笑いのライブに行くのが趣味だったんですけど、自然とそれもなくなりました。気づいてみると、「あれ、ライブよりサーキットの方が楽しいな」って。

窓から覗くロールバーや砲弾マフラーなど、見る人が見れば「ガチ勢」であることは明らかだ

 それで、しばらくは32を普段の足にも使っていたんですけど、燃費も悪いですし、足用の車に買い増したのがこのレックスなんです。足用でも楽しい車にしたかったので、最初からかなり弄ってある車両を選んだんですよ。

 ロールバーなんかも前のオーナーさんが入れていたもので、期待した通り運転はすごく楽しいですね。ただやっぱり、日常の使い勝手は……。足車なのに、買い物の荷物が載らないのは致命的ですよね。

装飾を排した簡素なインテリア。鉄板むき出しのフロアは迫力満点だ

 もちろん通勤もこの車ですが、会社の駐車場では多分、結構浮いちゃっていますね。女性専用のスペースが用意されていて、周りはほとんど普通の車なので……。32で通勤していた頃は、脱着式のステアリングボスを使っていたので、「ハンドル取れちゃってますよ」なんて言われたり。

荷室にはタイヤや工具類を詰め込んでいる

 でも32もレックスも、操作感がダイレクトというか、今の車にはない面白さがありますし、絶対に降りたくはないですね。最近の車に乗ると、色んな機能に感動はするんですけど、「欲しい!」とまでは思えなくて。

レックスで通勤しはじめた頃は、喫煙所のオジ様方に凝視されることも

 このレックスには長く頑張ってもらいたいので、これとは別に部品取り用の車両を家に置いているんです。車に興味がない両親は、かなり不思議そうな顔をしていますが……。「あとで処分するから」と言って早数年が経ちますし、そろそろ何か言われちゃうかもしれないですね。