過ぎ去った時代に焦がれるあまり、その不便さすら愛してしまった者たちがいる。維持の手間など百も承知、旧車の魅力に憑かれたオーナーの素顔に迫る!

 今回は「ハチマルミーティング 2024 at FSW」の出展者から、5代目クラウンに乗る「びーとん」さんをご紹介。

静岡で芸者として働きながら、5代目クラウンに乗る「びーとん」さん

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運命の出会いは突然に

 高校生の頃、バイト終わりに自転車を漕いでいたら、通り沿いの輸入中古車屋さんに並んでいた車に目が留まったんです。それまで車には興味がなかったのに、突然そのデイムラー・ダブルシックスという英国車にビビッときてしまって。もう、完全に一目惚れでしたね。

1979年式の5代目クラウン。「スーパーサルーン・エクストラ」という上級グレードだ

 それ以来ずっと、「大人になったら絶対に乗ろう」と思っていたのですが……。あいにく、そのダブルシックスにはオートマの設定しかなかったんです。反対に私の方は、教習所に通いはじめてから、どんどんマニュアルの運転が楽しくなってきちゃったんですよね。

 結局、ダブルシックスは車両価格もかなり高いですし、維持費も大変だというので、もう少し大人になってから乗った方がいいのかなって。

尻下がりのテールが気品を感じさせる

 それで、マニュアルで楽しくて可愛い車はないかと調べるうち、この型のクラウンに惹かれたんですよね。いい状態の車両を探すのには苦労しましたが、2年ほどかけて売ってくれる方を見つけて。

 納車されてから1年ちょっと経ちますが、かなり極上の状態で譲っていただいたので、想像していたよりも全然手がかからないんですよ。最初はSNSからでしたけど、前のオーナーさんとは今も親交がありますし、素敵なご縁を頂いたなと思います。

今でも高級車としての風格を醸し出す上質なベージュ内装

 自分にとってはクラウンが初のマイカーだったので、はじめはサイズ感を掴むのが大変でしたね。でも、慣れると今でも快適な乗り心地で、最近の車と比べても高級車らしさは失われていないと感じます。

 ただ友達を乗せると、「スゴい」と感動はしてくれるものの、助手席に乗るとみんな緊張して固まっちゃうんですよね。ちょっと周りを引かせてしまう面もありそうですし、職場でもなるべく、自分からは乗っている車の話題は出さないようにしているんです。

ウッド調のメーターパネル。運転席に座るだけでタイムスリップできそうだ

 それでもSNSやイベントを通じて、車に対する気持ちはどんどん強くなっていますね。最近は二輪にも興味が出てきちゃって、大型の免許も取る予定なんですよ。サンビームっていう車種を博物館で見て、やっぱり古いのってやたらカッコいいじゃないですか。

学生時代はデザインの勉強をしていたとのこと。美意識の高さも納得だ

 もちろんいつかは絶対ダブルシックスに乗りたいですけど、このクラウンも絶対に手放したくないですし、頑張って好きな車やバイクを維持できたらいいなと思います。