事件の当日、M社の車両で被害者を踏切そばまで連れ出したのは、島畑と野崎だった。
「2人は逮捕前の任意聴取で『高野は車を降りたいと言って、自分から車の外に出ていった』と供述しているが、現場に乗りつけた車は、被害者が電車と衝突するまですぐそばに停車したまま、成り行きを見届けていた。
社長の佐々木は現場にいなかったが、M社は社長の佐々木をトップに強い上下関係が構成されていて、理不尽な〝内輪ノリ〟も横行している小さな会社。その中で、被害者は日常的にイジメや暴行を受けていた。挙句の果て、4人は共謀し、事件の前夜から、高野さんを車内に監禁、電車に飛び込むしかない精神状態に陥らせ、死に追いやった。これが殺人行為にあたると判断した」(同前)
歪んだ職場内ヒエラルキーの犠牲となった高野さんは、北海道函館市出身。地元の公立高校を中退後、塗装会社などで働き、20代半ばで上京した。日雇い労働を含め、土建業などを転々とし、塗装業を営む佐々木のもとに流れ着いたのは、約10年前のことだ。
苛烈な暴行をグループLINEで共有し…
「被疑者らは任意の聴取で、高野さんについて『仕事が遅いんですよ』といい、暴行については『トロいので、教育の一環だった』と釈明。一方で、被害者は、『次にまた迷惑をかけたら死にます』といった趣旨の誓約もさせられていたようだ」(同前)
生前の高野さんが受けてきた仕打ちは、苛烈を極めた。
「被疑者らのスマホを解析した結果、高野さんに危ないプロレス技をかけたり、火傷を負わせたりするなどの暴行動画や写真が複数残っており、それらがグループLINEで共有されていた。被害者が負傷した患部を写した生々しい画像も残っていた。高野さんは医療機関を受診した際に、『自分で怪我をした』と説明し、被害を訴えていなかった。虐待は徐々にエスカレートし、被害者の肛門に棒を突っ込むなど、強制わいせつに相当する悪質な行為もあった」(同前)