衆院選で議席を4倍に伸ばして、大きな注目を浴びた国民民主党の玉木雄一郎氏。玉木氏の勝因は何だったのか。その戦略を探求した。

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突出して生配信が見られていた玉木

「選挙期間中、X(旧ツイッター)で政党党首や政党公式のアカウントでフォロワーが増えた数を比較しました。すると、突出して伸びていたのが国民民主党と玉木さんでした」

 選挙とネットの関係を調査するネットコミュニケーション研究所の中村佳美代表はそう語る。調査によると、10月15日を起点として26日までの間に玉木のフォロワーは約3万人増加。第2位の自民・高市早苗と比較しても3.4倍だ。

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 YouTubeでの比較でも、玉木は突出している。政党公式の動画視聴数の平均(中央値)を比較すると、自民は8100、立憲民主は4300に対して、国民民主は1万8000。玉木個人の「たまきチャンネル」はそれ以上で、5万8000にも達する。また、政党公式のライブ配信での視聴数では立憲は5000、国民民主は5万だが、玉木は個人で16万9000(自民は行っていない)。突出して生配信が見られていたことがわかる。

SNSを駆使して衆院選で躍進(YouTube「たまきチャンネル」より)

「選挙ドットコム」の高畑卓代表も、各種数字を見れば、今回の選挙は国民民主というより玉木個人の力で得票を伸ばしたのが実態と語る。

「通常、有権者は候補者や政策より政党やその代表を見て投票します。今回の国民民主の場合、玉木さんが訴えたことが有権者に響いた。れいわや保守党などミニ政党で起きることが今回国民民主で起きたのではないかと思います」

 では、なぜここまで玉木は人気を集めることができたのか。ポイントはライブ配信と切り抜き動画だと前出の中村代表が言う。

「玉木さんがユーチューバーとして活動しだしたのは2018年から。なかでも視聴者とチャットでコミュニケーションするライブチャットが選挙前から若い層に響いていました。日々の地道な活動が政策と相まって有権者に響いたと思います」

 過去の動画には、スーツ姿で話題の政策を説明する動画もあれば、自室からパーカーなど私服のまま語る動画もある。こうした活動を玉木は「ネットドブ板」と称してきた。