やらなければいけないことを先延ばしにしてしまった。大事な手続きや持ち物を忘れてしまった。そんな失敗を繰り返して「私はだらしない人間だ」「情けない」「恥ずかしい」とがっかりしてしまうことはありませんか?
ここでは、普段からADHD(注意欠如多動症)の大人にカウンセリングを提供し、自身もADHD特性のある臨床心理士・中島美鈴さんが、実際に担当されたケースをいろいろ混ぜた架空の人物の「お困りごと」を解決する『仕事も人生も、これでうまく回る!不器用解決事典』(朝日新聞出版)より一部を抜粋。
「仕事のミスで落ち込む彼女にアドバイスしたら、なぜか不機嫌にさせてしまった」という20代企業コンサルタント男性のお悩みと、中島先生が提案する対処法を紹介します。(全4回の2回目/続きを読む)
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ユウキさん(20代、企業コンサルタント)のぼやき
僕には年下の恋人がいるのですが、彼女のために何かしてあげたいといつも考えています。たとえば、仕事のミスで落ち込んでいる様子を見ると、少しでも力になってあげたくなるんです。
だから、どんなふうにミスが起きたのか状況を聞き出して「取引先に予算と納期についてはっきり確認しておかないからミスが生じたんじゃないかな。次からは気をつけた方がいいよ」と優しく助言しました。
すると彼女は「そんなの私だって知ってるよ」と不機嫌になったのです。せっかく聞いてあげたのに、彼女の態度にはがっかり。面白くありません。
今回だけじゃなくて、せっかくいいアドバイスをしたのに、彼女が不機嫌になることがよくあって、何がいけないんだろう……。
なんで、こうなるの?
相手に何か助言をしたくなる背景には「すべき思考」と呼ばれる認知の歪みがある場合が多いです。これは、「~して当たり前だ」「普通~するべきだ」という私たちが自分自身や相手に対して求めている基準のような思考を指します。
ユウキさんは、相手を思いやって仕事でミスが生じた状況を丁寧に聞き出し、次に同じ失敗を繰り返さないための助言をしましたが、そのアプローチが相手の気持ちに寄り添っていませんでした。
彼女としては、ミスをして上司に𠮟られたつらかった気持ちをもっと聞いてほしかったのです。しかし、ユウキさんは、相手の気持ちを理解しようとせず、自分の意見を押し付けてしまっていました。「~してあげたい」という表現にもそれが表れています。
まとめると、ユウキさんは相手の気持ちを聞いた上で共感しようとすることができていないのです。このようなやりとりを繰り返していては、この恋愛は続かないかもしれません。