やらなければいけないことを先延ばしにしてしまった。大事な手続きや持ち物を忘れてしまった。そんな失敗を繰り返して「私はだらしない人間だ」「情けない」「恥ずかしい」とがっかりしてしまうことはありませんか?

 ここでは、普段からADHD(注意欠如多動症)の大人にカウンセリングを提供し、自身もADHD特性のある臨床心理士・中島美鈴さんが、実際に担当されたケースをいろいろ混ぜた架空の人物の「お困りごと」を解決する『仕事も人生も、これでうまく回る!不器用解決事典』(朝日新聞出版)より一部を抜粋。

「いつも待ち合わせに5分遅れてしまう」という30代会社員の女性のお悩みと、中島先生が提案する対処法を紹介します。(全4回の1回目/続きを読む

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ユキノさん(30代・広告会社クリエイティブ担当)のぼやき

 仕事上の約束だけでなく、友達とのランチの約束も、美容院や病院の予約にも、いつも5分ほど遅れてしまいます。

 友達は綺麗にヘアセットを済ませて手土産まで準備してくれているのに、私にはそんな余裕がありません。

 待ち合わせ時刻が近づくにつれバタバタしてしまうのです。

なんで、こうなるの?

 待ち合わせに間に合うように準備するのは脳の実行機能のなせる技で、脳の働きの中でも最も高度なものです。

写真はイメージ ©︎graphica/イメージマート

 実行機能のプロセスは、(1)出かける準備をスタートさせる「とりかかり」、(2)持っていく物を考えたり目的地までのルートを検索するなどの「計画立て」、(3)実際に身なりを整えたり持参する物をバッグに入れる作業を時計を見ながら進行させる「進捗気にして」、(4)準備の途中に別のことに気を取られすぎないように注意する「脱線防止」の4つです。これらすべてがうまくいって初めて遅刻せずにたどり着けるのです。

 ユキノさんは、(2)の「計画立て」をせずに、支度を始めてしまうことが原因で、準備がうまくいかないのです。