やらなければいけないことを先延ばしにしてしまった。大事な手続きや持ち物を忘れてしまった。そんな失敗を繰り返して「私はだらしない人間だ」「情けない」「恥ずかしい」とがっかりしてしまうことはありませんか?
ここでは、普段からADHD(注意欠如多動症)の大人にカウンセリングを提供し、自身もADHD特性のある臨床心理士・中島美鈴さんが、実際に担当されたケースをいろいろ混ぜた架空の人物の「お困りごと」を解決する『仕事も人生も、これでうまく回る!不器用解決事典』(朝日新聞出版)より一部を抜粋。
「なぜ、僕には親友がいないんだろう……」と悩んでいる10代男子学生に対して、中島先生が提案する解決法を紹介します。(全4回の3回目/続きを読む)
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アユムさん(10代学生、テレビ局アルバイト)のぼやき
自分にはこれといって特技も強みもないし、トークも冴えないので、魅力的な人と親友になって、その人からいろいろ吸収したいんです。
素晴らしいインフルエンサーと繫がれば、その人からいいものを学べるはずですし、その人から広がる人脈も大事にしたいです。
なんで、こうなるの?
一般的に人間関係は、アサーティブな関係ほど続くと言われています。アサーティブな関係とは、相手と自分のどちらも尊重した、平等で率直な関係を指します。どちらかが一方を搾取したり支配したりするような関係ではなく、自己犠牲の上で成り立つ関係でもない点が特徴です。そうした関係が続けば、親友にまで仲を深めていくことができる可能性は上がるでしょう。
アユムさんは、友達関係において他人から得ることばかりを考えています。それは自分の魅力に自信がないから、吸収したいと思っているだけなのですが、他人に求めてばかりで自分から何かを与えることが少ないのでは、相手と平等な関係とはいえません。
アユムさんが希望するインフルエンサーが目の前に現れたとして、アユムさんは本当に対等な関係を築くことができるでしょうか?
これでは、片方に負担がかかり、友人としてはいびつな関係ですし、双方にとって心地よいものではなく、続いていく可能性は低いでしょう。
一方であまりにgive and takeの考えにばかりとらわれるのも、なんだか違う感じがします。こうした感情にとらわれすぎると「自分から与えてばかりで損したくない!」「自分が相手にしてやった分は返してほしい!」といった恩着せがましい関係になりがちということです。
アユムさんには、目の前の人にもっと何か与えられることのある魅力的な人になってほしいですし、見返りを求めてgiveしようという動機ではなく、本当に相手を大切にしたいという思いで友達を作ってほしいものです。