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 第二子が計画通りに生まれ、母親は時間のゆとりを持ってA子さんの中学受験に備えた。塾は難関中学受験で有名なSAPIX(サピックス)。サピックスはプリント学習が中心だが、量が膨大で、自分で完走できる子どもは多くない。

 そこでA子さんの母親は、テストで点数が取れなかった問題をチェックし、プリントの中から似た形式の問題を見つけて印刷し、学校から帰ってくる前に机にセットしておくようにしたという。

「学校から帰って一休みしたら、机に向かうよう習慣をつけていました。その日にやるべきことを私の方で管理して、勉強だけに集中できるよう心がけていました。こうしてセットしておけば、すぐに勉強がはじめられます」(A子さんの母親)

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写真はイメージです ©AFLO

 確かに小学生の場合、「鉛筆がない」「テキストがない」「今日はどこからやろうか」と考えるうちに時間だけが経ってしまい、テキストを開いたときにはすでに飽きているということも多い。親がここまで準備をしておけば、本人が「今日はどの問題をやろうか」と考えることはなくなるため、効率的とも言える。

 幸いA子さんは勉強が好きで、解けない問題があると時間を忘れて取り組むほどの根気を持ち合わせていたため、母親のサポートもあって見事に御三家合格を果たした。

 だが教員の中には、こうした状況に危惧を覚える人もいる。都内の難関中学で教える教員は、困り顔でこう話す。

「学校でも、先生に言われるまで何もせずに待つ子が増えていると感じます。『指示待ち人間』なんて言われますが、その元凶は親の“管理しすぎ”にあるのではないでしょうか。お膳立てをしてもらわないとできないのでは、大人になってから困ります。自分で勉強も組み立てていけるようになってほしいのですが……」

 人生、親がいつまでも手助けしてやれるものでもない。せっかく憧れの難関校に入学しても、親に下駄をはかせてもらい入学した子の場合、入ってから辛くなる子も少なくないのだ。

女子御三家の中で桜蔭の人気が高い「教育力」以外の理由

 そして中学受験の志望校選びでは、ほとんどの親が校風など以上に卒業後の進路を重視している。難関大学への合格実績に魅力を感じる家庭は多いが、それが本当に学校のおかげかどうかは意外と見極めが難しい。

 例えば、女子御三家の中で桜蔭は東大合格実績においては頭一つ抜けているが、学校の教育力そのものよりも、“大学入試の邪魔にならない”ことを重視して入学する家庭もあるほどだ。

桜蔭中学・高校 公式サイトより

 今年出会ったB子さんの家庭が桜蔭の受験を決めたのもまさにこの理由だった。B子さんは現在、私立難関大の医大生になっているが、母親は中学受験のはるか前から現在に至るまでの道のりを綿密に考えていた。