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 B子さんの母親は大企業で総合職として働いているが、忙しいからといって子どもの教育を妥協したくなかった。まず小学校のタイミングで、中学受験を見据えて受験の面倒も見てくれる私立小学校を受験し合格。

 入学した小学校はそのままエスカレーターで偏差値60超えの中高一貫校に進める学園だが、B子さんの母親にとってその入学権利はあくまでも「保険」で、本命はさらに偏差値の高い外部中学の受験だった。B子さん以外にも外部中学を受験する子どもは多く、学校側も家庭のこうしたニーズをくみ取って中学受験のアドバイスも手厚かったという。

桜蔭は「通塾しなくていい」というが、6割の生徒が鉄緑会に

 だが、だからといって中学受験の勉強を学校に任せておけばいいということではない。外部の塾に通うのは当然で、B子さんは早稲田アカデミーに入塾した。

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 B子さんの成績は順調に伸び、見事に第一志望の桜蔭中学校に入学。母親がB子さんに女子御三家の中でも桜蔭を薦めたのは、“その先”を考えていたからだ。

 中学に入学すると、B子さんはすぐに東大入試で有名な鉄緑会に入会した。鉄緑会とは、東大進学を目指す子を専門に教える塾で、トップクラスの中学・高校の生徒の多くが在籍している。今年の在籍数を調べてみると、桜蔭から同会に入会している生徒は891人。桜蔭は中学から高校までで全生徒数が1400人ほどのため、実に6割の生徒が鉄緑会に入っていることになる。

鉄緑会 公式サイトより

 B子さんは後に東大から医学部に志望を変更したが、鉄緑会は国立大学対策に役立つため、退会はせずにプラスで医学部専門の塾に通うことに。母親は、これは桜蔭だったからできたことだと話す。

「元々いた私立の付属中学は宿題が多いことで有名でした。桜蔭はほとんど宿題がありませんから、助かりましたよ。あのまま付属中に進学していたら、学校の宿題の多さにやられて塾の勉強との両立が難しかったと思います」(B子さんの母親)

 B子さんの家庭が桜蔭に期待したのは、上を目指す子が集まる学校であることに加えて「塾通いの邪魔にならない」ことだったのだ。

 数字の上では、毎年70人前後という女子御三家の中でぶっちぎりの東大合格者数を出している桜蔭。すでに麻布や都立日比谷も抜いて最上位グループに食い込んでいるが、生徒の親たちは学校での勉強よりも、塾の力を信じているのではという気もしてしまう。

写真はイメージです ©AFLO

 桜蔭側は「通塾はしなくていい」と保護者に伝えているが、ほとんどの子が外部の塾に通っているのが実情で、実績によってトップ大を目指す親たちの心を掴んでいる。

 子供以上に親の思惑を巻き込んで、学校の序列もめまぐるしく変わる中学受験業界から目が離せない。