2017年の11月、大手IT企業・サイバーエージェントの藤田晋社長から「マージャンの企業リーグをつくりたい」という構想を聞かされた時は、身体が震えた。企画書の表紙には「Mリーグ」と書かれていた。
イメージが悪いマージャンをエンタメ色が強いスポーツへ
マージャン界という小さな世界でライターやイベントの運営などで生活していた私にとって、その話は大きすぎた。
だが、目の前にいるのは藤田晋だ。彼がつくりたいというのだから、来年には形になっているのだろう。私たちはそれに応えることができるのか。大きなリスクを承知でマージャンのために動いてくれる藤田さんに、迷惑をかけてしまうのではないだろうか。
大きなリスクというのは「ほらやっぱり、マージャンみたいなものに関わったらロクなことにならない」という声があがることだ。それまでもマージャンはコンテンツとして強かった。テレビで対局番組をやれば高視聴率を叩き出していたのだが、スポンサーが付かなかった。
イメージが悪かったからだ。
古くは1998年の和歌山毒物カレー事件で、容疑者が自宅で3人マージャンをしていたことが報道された。最近では2020年に黒川弘務元検事長の賭けマージャンを「週刊文春」が報じたが、こういうことがあるたびに「やっぱりマージャンは」という目で見られる。
企業からは「大衆に愛されるコンテンツではあるが同時に危険もはらんでいる」と判断され、スポンサーがつかない。
金がないと大きなことができないので、マージャン界はずっと細々とやってきた。
「脱ギャンブル化」をアピール
その流れを「Mリーグ」が変えた。
藤田社長が自らチェアマンとなり「ゼロギャンブル宣言」を行った。賭けマージャンに関わった選手は永久追放という厳しい姿勢を打ち出すことで、企業に安全性をアピールした。サイバーエージェント自身がチームを持って参戦することで、大きな説得力が生まれた。藤田さんは真っ暗な洞窟に先に入って「この先に楽しいものがありますよ」と、身を挺してパフォーマンスしてみせたのである。