安い手では納得せず、門前で高打点を追求する「セレブ打法」で多くの麻雀ファンから愛されるプロ雀士の黒沢咲氏。個性的な打ち手が集まる麻雀プロリーグ「Mリーグ」のなかでも、彼女の副露率(全体の局数のうち1回以上鳴いた局の割合)は異様に低く、粘り強く高打点を狙い澄ます姿は“強気のヴィーナス”とも称される。なぜ黒沢氏は“鳴かない”麻雀にこだわり続けているのか。

 ここでは、同氏が自身の麻雀観について語った著書『黒沢咲の 鳴かずに勝つ! セレブ麻雀』(KADOKAWA)の一部を抜粋。妥協なき勝負師の考えを紹介していく。(全2回の1回目/後編を読む)

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妥協はしない

 私の麻雀の基本スタイルは、門前で高打点を狙う打ち方だと思います。もちろん、まったく鳴かないわけではないですが、高くなる可能性のある手を“妥協”して安くするような鳴きはしたくない、という強い思いがあります。

 妥協についての感覚は、人それぞれだと思います。これは私の場合ですけど、たとえば11巡目、門前で満貫以上が狙えるタンピン系の手のイーシャンテンで、上家から場に6枚目の「五索」「八索」が切られました。鳴くと3900点になってしまいますが、さすがに6枚目ということで、これは鳴く人が大半かと思います。でも私は、これも鳴かないことが多いです。

 

 可能性が残っているうちは最高形を目指したい。この我慢のあと、自分で「五索」「八索」を引き入れてアガリに結びついたとき、そこからはゾーンに入ったような感覚になることが多いです。私はなぜか、残り枚数の少ない薄い牌をよく引くんです。こういう「五索」「八索」を鳴くと同巡で下家にツモ切られ、グッと我慢してみたらサクッと引いてくるような経験を、数えきれないほどしてきました。ですから、こういう目先のアガリよりも、爆発のきっかけとなるような打ち方をいつも心がけています。

 あと、よくあるのが役牌を鳴くかどうか。特に2枚目、「二鳴き」と呼ばれるものです。それが鳴いて1000点、2000点の手だったら、基本的には私は鳴きません。それよりも、役牌をトイツ落としして高打点に作り替えてのリーチを狙います。それに、自分の手がイマイチのときは、2枚切れの役牌は頼れる安全牌になりますからね。

 この辺りの手組みは、Mリーグ(一発裏ドラあり、赤牌3枚)でも、日本プロ麻雀連盟のリーグ戦(一発裏ドラなし、カンドラなし)でも、あまり大きくは変えていないつもりです。ただ、連盟のルールのほうがリーチや裏ドラによる打点アップが少ない分、さすがに少しだけ鳴きは増えているようです。それでも、Mリーグで7~8%のところが、連盟ルールだと10%くらいになる、という微々たるものですけどね。