鳴かない理由
今でこそあまり鳴かない麻雀を打っている私も、以前はもう少しよく鳴いていました。そして、スタイルを曲げて鳴いたことが原因で、ひどい負け方をしたことも数えきれないほどあります。そんな経験をたくさんして、「麻雀で負けるのは仕方ない。でも、らしくない麻雀を打って負けるのは嫌だ!」という思いが強くなり、今のような雀風に変わっていったと思います。
鳴きに関しては、今でも「これはさすがに鳴いたほうがいいのかな?」と思うことはもちろんあります。でも、不思議なことに、そういう場面でもグッと堪えて門前で勝負したほうが、私にとっていい結果を生むことが多いんです。なぜなんでしょうね。たぶん、ほかの人にとってはまったく必要な我慢じゃないと思うんですけど。大げさですが、そういう宿命、そういう星の下に生まれてきた、みたいな感じかもしれません。
笑ってしまった話があるのですが、Mリーグの試合で私がある牌を鳴かなかったことに対して、控え室で応援してくれていた萩原さんと瀬戸熊さんがモニターに向かって「お嬢、なんで鳴かないんだよぉ~」「めっちゃ急所なのに、もぅ~」とヤキモキしていたらしいんです。それを鳴かないなんてありえないという牌だったようで。でも、その局は最終的に門前でテンパイして、リーチをかけてツモ、鳴いたときの3倍くらいの打点でアガったんです。
そのアガリを見てふたりは、モニター越しの私に向かって「すべて、あなたが正しい!」「すみませんでした!」と言いながら深々と頭を下げたらしいです(笑)。
解説などを聞いていると特に思うのですが、今では私の鳴きは結構警戒されているみたいですね。「黒沢が一鳴きした、これは安いわけがないっ!」みたいな。だからといって、そういう印象を利用して、ブラフのような仕掛けで相手を惑わせる、ということは考えていません。もしもそういうことを私がやり出したとしたら、それはきっと私の心がブレていて、精神状態がかなり悪いときじゃないかと思います。
ブラフの仕掛けが悪いことだとは思わないですし、上手に使えば有効なんだと思いますが、私の武器はそこじゃないんです。いつでも自分らしく、正々堂々と美しいアガリに向かって突き進む姿勢は崩さずにいたいなと思います。
ちなみに、私が鳴いたことでほかの人が露骨に警戒し出す、みたいなのは自分ではあまりわからないのですが、リーチをかけた途端に周りがサーッと引いていく、と感じることはたまにあります。本当に「サササササー」って音がするみたいに(笑)。対戦相手にとって怖いのは、やっぱり私の鳴きではなく、リーチなんだと思います。