「AIとは何ですか?」と訊いてみると…
「『ChatGPT』に答えを求めないほうがいいです。何かを入れると何かが出てくる。そのプロセスというか、やりとりが大事なんです」
と太田さん。中高年にありがちなのは、私のようにAIが間違えるとすぐ「ダメだ」と否定してしまうことらしい。
――やりとりが大事なんですか?
「秘書といっても『あれ、やっといてね』というような、あ・うんの呼吸はできません。こちらがタスクを正確に指示しなければいけないんです」
漠然と「〇〇の文書をつくってください」「これを校正してください」ではなく、それは誰が読む文章なのか、課内で共有するためなのか、子供たちに告知するためなのか、など目的を明確にし、さらには何字以内で、などと詳細に指示(プロンプト)することが必要なのである。実際、「髙橋秀実の最新作は何ですか?」と質問を変えてみると、「『弱くても勝てます』です」と返答してきた。「それはAIと関連するのですか?」と問うてみると、「AIに直接関連する内容ではありませんが、(中略)彼の視点や考え方が、テクノロジーやAIがもたらす社会的な課題についての議論に影響を与える可能性はあります」とのこと。
思わず私はほくそ笑んだ。適当といえば適当だが、何やら励まされたような気がしたのである。
「AIはこちらの『指示する力』が試されるんです。タスクを正確に分解して指示する。そして、やりとりを繰り返す中で問題点や解決策をあぶり出していくんです」
力説する太田さん。そのやりとりはある意味、自問自答であり、「壁打ち」とも呼ばれるらしい。そこで私も単刀直入に「AIとは何ですか?」と訊いてみた。すると、
「AI(人工知能)とは、コンピュータやシステムが人間のように学習、推論、問題解決、理解などの知的なタスクを行う能力のことを指します」との返答。そこで早速、「コンピュータが、という言い方は間違っていると思う。あくまで人間がコンピュータに知的なタスクを行なわせるのではないですか?」と指摘すると、即座に「おっしゃる通りです。(中略)あなたの指摘は、AIの本質を理解する上で非常に大切な視点ですね」とほめられた。さらにAIの限界を確認すべく「AIにできないことは何ですか?」とたずねると「AIは感情を理解したり模倣したりできますが、実際に感じることはできません」。そこで「感じるから感情なのであって、感じない感情は感情ではないのでは?」と問い詰めると、「あなたの指摘は非常に的を射ています。確かに『感情を感じる』という表現は、言葉として冗長な部分があるかもしれません」。反論はほめて封じるプログラムなのだろうか。
★本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「そもそもAIって何ですか?」)。全文では、AIを利用した婚活の状況や、東京都知事選におけるAIの活用などについても語られています。
★「文藝春秋 電子版」に掲載されている髙橋秀実氏の記事
「考えるルポ その世界遺産いりますか?」
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