増田 主人はすごく前向きな考え方をする人でした。末期がんと宣告されたら、いくら主人でもちょっとは落ち込むかなと思ったんですけど、ずっと夜はぐっすり。枕に頭を付けたら5秒で寝ちゃうんですよ。宣告後もいっぱい食べて、タバコは隠れて吸っていた(笑)。アマチュアでバンドをやっていたのですが、練習後の飲み会も変わらず参加してお酒も飲み、発表会もやり。本当に今までと変わらないように生活していたので、宣告は何かの間違いじゃないか、と思うくらい元気だったんですよ。
有働 強靭な精神力ですね。
増田 それまでもずっと主人のことが大好きだったので、どうしたら主人が毎日笑顔で幸せに暮らしてくれるかなと思って生きてきましたが、限りがあると聞いてからはもっともっと……。主人の姿勢には、私を動揺させたくないという思いもあったのでしょうね。
支えてくれた同期の友人
有働 がんは、患者さんの一番そばにいる人が、痛みを代わってあげられない無力感や不安にとらわれることも多いですよね。
増田 私の場合は、芦川よしみちゃんという同期デビューの友達が、旦那さまがドクターということもあって、心配してわが家によく来てくれていたのが大きかった。膵臓がんが見つかった直後の検査入院の時も病院まで同行してくれて、帰りに言ってくれた「一緒に頑張ろうね」という一言がすごく心強かったです。
有働 ケイさんもまた、ご友人に支えられていたのですね。
増田 彼女がいてくれたので私は壊れずにいられました。主人は最後の10日ほど痛みで苦しんだので、息を引き取った時には、悲しみより「痛みから解放されてよかった」という気持ちの方が強かったです。
※本記事の全文(約8600字)は「文藝春秋」2025年1月号と「文藝春秋 電子版」でご覧ください(増田惠子×有働由美子「忙しくても『嫌だ』と思うことはなかった」)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。
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