2学期の期末試験初日の12月6日、タカヒトくんは「倫理・政経」の試験にカンニングペーパーを持ち込んだ。それに気づいた試験監督の教員がテストを中止させ、タカヒトくんを「学友会室」と呼ばれる小部屋に連れて行った。タカヒトくんはそこで、男性教師から「卑怯者」と言われるなど事情聴取と指導を受けた。
学校の報告書によればタカヒトくんが一度書いた反省文を生活指導の教師が確認し、「校長先生、副校長先生の朝礼の話、覚えているか?」と質問したという。タカヒトくんが「カンニングの話ですよね?」と答えると、教員は「絶対あかんってことと、卑怯者がやることって話やな。ちゃんと聞いていたんやな」と言ったという。
タカヒトくんはカンニングの事実を認め、「(前日の)深夜の2時ごろになって倫理・政経の試験範囲で勉強していないところがあることに気付き、その時点からでは覚えられないと思い、カンニングペーパーを作ったと答えた」(調査報告書)と言ったという。
母親は恐怖感から、タカヒトくんの手を握って…
指導の場所になったのは、「生徒指導室」の奥にある「学友会室」。棚などをのぞくと7m²しかなく、タカヒトくんと教師の距離はごく近い。そんな空間で複数の教師から40分間にわたって事情聴取や指導を受けた。その後は到着した母親と一緒に学長室で20分ほどの面談があった。カンニング発生から帰宅まで4時間ほど拘束されていたという。
母親が学校からの電話を受けたのは、カンニングが発覚した直後だった。指導対象になったとだけ告げられ、「すぐに学校にきてほしい」と言われ、仕事を中断して学校に向かった。道中、母親は不安になって単身赴任中の父親に電話したが、父親も事情がわからない状況では「とりあえず行くしかない」としか言えなかった。
学校に到着した母親が学長室に案内されると、そこには男性教師5人がいて、しばらくするとタカヒトくんが別の教員に連れられ入室してきた。その際、カンニングに関する事実を告げられる間、母親は、男性教員5名に面談されるという圧迫感で恐怖感を抱いた。そのため、タカヒトくんの手を握って話を聞いていた。
このとき教師たちは処分の内容について話したが、母親が「息子は『卑怯なことをした』と言わされた感があった」と証言する一方で、報告書では「卑怯者と言わせたと認定することは困難」と見解の差が生じている。

