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大森 ここ1、2年でフェイクニュースの数がすごく増えて、何が真実で何が虚構なのかわからなくなってきたことが大きいです。

 例えば、先日起きたとある殺傷事件も、犯人が逮捕される前にX(旧Twitter)で「被害者の父親はその地域のマル暴(暴力団対策を担当する警察関係者)で、おそらくプロによる犯行だろう」というポストを目にして反射的に“そうなんだ”と思ってしまったんです。

 結局それは事実無根のフェイクニュースだった可能性が高いわけですが、騙された感覚もないまま情報を得た気持ちになっていたわけです。“自分には関係ない”というフィクション的なものに回収できる情報だからスッと入ってきた。

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 それって実は恐ろしいことで、陰謀論とかなり近い構造があると思うんです。納得できなかったことや自分自身に近づく怯えに対して、ストーリーを作ることによって遠ざける。

 陰謀論にしても、ほとんどの人は“どうしてそんなものにハマるんだろう?”という立場だと思うんですけど、フェイクニュースに翻弄された自分も含めて同じ穴のムジナだったと。それくらい真偽が分からないことがベースになっている今の世の中で、コンテンツの真偽そのものに興味が持てなくなっているかもしれないという思いが僕の中で生まれたことで、そこじゃなく物語なんだという気持ちが強くなっている感じです。

 TXQ FICTIONを“この番組はフィクションです。実際の人物や事件とは無関係です”とかなり強く打ち出したうえでやっているのは、そういうムードの変化も大きいです。

作り手として『飯沼一家に謝罪します』に込めた思い

──SNSで誰でも発信できるからこそ、腑に落ちるストーリーさえ作れたら真偽に関わらずどんどん拡散していく。昨今のコンテンツ人気を支えている考察ブームにもつながるところですね。

大森 考察自体、そもそも陰謀論とかなり近いですよね。例えば“バイデン大統領はゴム人間とすり替わっている”と言われた写真を見ると、確かに首元のしわがゴムマスクの切れ目のように見えなくもない。そこからストーリーを紡いでいく行為は、フェイクドキュメンタリーの中でも“背景のカレンダーに映っていた数字の位置に汚れがついていたのは何か意味があるに違いない”と考察する行為にすごく近いと思うんです。

 そうした考察的なものがフェイクドキュメンタリーを盛り上げてホラーブームを起こしていただいているのは間違いないんですが、そういうところで面白さを作っていくよりは大きな物語を作りたい気持ちが強まっているのも、そういうことへの危惧であり怯えでもあります。

『飯沼一家に謝罪します』に関しても、作り手である僕たちがこうしたいと思う物語にちゃんと収束させて、見てくださった人全員がその物語に何か感じてくださると嬉しいです。

INFORMATION

【タイトル】 TXQ FICTION「飯沼一家に謝罪します」
【放送日時】 2024年12月23日(月)〜26日(木)深夜2時00分~2時30分
【放送局】テレビ東京
  TVerで配信中 https://tver.jp/series/srog0v9atu

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