23日から4夜連続でテレビ東京で放送されているTXQ FICTION第2弾『飯沼一家に謝罪します』。フェイクドキュメンタリーの旗手が考える人が感じる“怖さの正体”とは…。(全3回の3回目/♯1、♯2を読む)
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ホラーにおいて大事なこととは?
──映像に関してのお話も聞かせてください。大森さんはVHSビデオテープの映像にこだわりがありますね。
大森 やっぱりホラーにおいて不鮮明さは大事ですね。VHSの映像は自分が小学生になるかならないかぐらいの時にギリギリ見ているので、かろうじて怖さと繋がっています。
最近聞いた話で興味深かったのが、Z世代の間でiPhone4(2010年発売)が流行っているそうなんです。理由は「レトロに撮れるから」。なるほどなと思いました。
僕が小学生の頃にプレステ2で『キングダム ハーツ』とか『ファイナルファンタジー』を遊んだ時は映像がリアルすぎて“これもう実写映画じゃん”と思っていたんですけど、今見ると全く写実的には見えない。それどころかポリゴンの感じとか不気味に映るんです。それって今の子にとってのiPhone4と同じなのかもなって。
不鮮明さというものは時代ごとに移り変わるものであり、ただ不鮮明なだけではその人にとっての怖さと繋がらない。そこにノスタルジーが接続していることが大事なんだと思います。フィルムで撮った写真も画質的にはVHSと同じぐらい粗いですけど、僕はそこにあまり怖さを感じたことがないんです。人生で通っていないから、ただ「フィルムだな」と思うだけなんです。
なので今15歳くらいの子がVHSの映像を見た場合、急にノイズが入ったり画面が乱れた、ある種ジャンプスケア(観客を驚かせるために大きな音と共に映像を突然変化させるテクニック)的な観点で怖がってくれるとは思うんですけど、普通にそれを見た時に果たして怖さを感じるかどうかはわからないです。
僕は今、プレステ2の映像とか3DSのカメラで撮った映像を見て怖いと感じるのは、自分の小学生の頃の思い出と結びついているし、VHSともまったく違うかたちであるものの不鮮明さがあるからだと思います。その時その時に僕たちが思う不鮮明さっていうものには、惹かれ続けると思います。