──大森さんは1995年生まれですが、この年は阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件が起こるなど日本にとって大きな転機となる年でした。意識されることはありますか。
大森 まだ物心はついてないですけど、世紀末感漂う雰囲気があったんだろうなというのは感じます。そこから中学生の時に東日本大震災、新卒で入社してすぐコロナ禍と、人生の節目ごとに絶望的なことが起こっている感覚が個人的にはあります。特に東日本大震災が僕たちの世代に与えた影響はすごく大きいと思います。
僕が大学生の頃はSEALDs（自由と民主主義のための学生緊急行動。新時代の学生運動として2015年5月から2016年8月まで活動）がムーブメントとして大きかったですし、そうしたものが結果的に何もならなかったという感覚もすごくあるんです。
もっと多くの人に接続する迫力があるものを作りたいなと
こういう話をしていると、村上春樹氏の同世代の人たちが学生運動で何も変わらなかったことでデタッチメント（無関心）になった人も多いということを想起したりもします。
ただ、僕は今29歳ですけど30歳に近づくと微妙に考え方が変わってきて、今まではオルタナティブでそれなりな規模のものを作れたらいいなと思っていたんですけれども、より大きなところに接続したいという感覚が出てきてます。こういうことするとダサいとかサムいみたいな感覚が20代半ばの頃はすごく強かったんですけど、そんなこと言ってても仕方ないし、もっと多くの人に接続する迫力があるものを作りたいなと。
ありがたいことに20代のうちに好きなジャンルで何本か作らせてもらって、特に『行方不明展』（2024年7月19日～9月1日開催）をたくさんの方に見ていただけたことも、そういうムードになった要因のひとつかもしれないです。。『飯沼一家に謝罪します』も、物語としてちゃんと終結していて圧があるものを作ることで、より大きいテーマに向かいたいと思っています。
（※）2010年代初頭にインターネット上で発生した音楽のジャンル。1980～1990年代の商業音楽や映像をサンプリングして、チョップド＆スクリュード（再生速度を落とし、半拍ずらして反復することで独特な音を生む手法）などで加工した音像が大きな特徴。
INFORMATION
【タイトル】 TXQ FICTION「飯沼一家に謝罪します」
【放送日時】 2024年12月23日（月）〜26日（木）深夜2時00分～2時30分
【放送局】テレビ東京
TVerで配信中 https://tver.jp/series/srog0v9atu
