不倫関係にあった女性を殺害しただけじゃない…2010年、静岡で2人の女性を殺したことが明るみになった桑田一也死刑囚。男の犯行はなぜバレたのか? そして事件を探るなかで明らかになった、その恐るべき犯行手口とは? ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の新刊『殺人の追憶』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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明るみになる残忍性

 発端は2010年4月、桑田が詐欺容疑で逮捕、起訴されたことにさかのぼる。そのとき小さなリフォーム会社を経営し、事業に行き詰まり生活に困った桑田は、知人女性に対して約90万円の詐欺を働いた。逮捕時に写真週刊誌に載った桑田の本人写真は、パンチパーマに色付きのメガネをかけいかにも強面風だったが、犯した罪からすれば単なる小悪党だと当初は見られていた。

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 だが、後に、過去に女性2人を殺めていたという、隠れたもう一つの顔が明るみになる。一人目の被害者は、2005年当時に桑田と不倫関係にあった日比野かおりさん(当時22歳)だった。

 桑田は、妻子ある身でありながら、2005年7月から日比野さんと沼津市内の自宅で同棲生活を始めた。が、住宅ローンの返済や生活費に困り日比野さんの郵便貯金口座から合計990万円を無断で引き出した。後に桑田の仕業だと発覚し、日比野さんは桑田を責めたが、返済を確約したことから被害届を提出することはしなかった。

 同年10月26日夕方、事件当日。桑田と日比野さんは、カネの返済を巡り口論となった。現場は自宅寝室で、日比野さんはベッドに腰掛け、桑田は立っている状況だった。

 日比野さんが「いつお金が用意できるかはっきりして」と詰め寄った。桑田が「それはできない」と拒むと、日比野さんは痺れを切らして「警察に事情を話して、訴える」と言って立ち上がり、寝室から出ようとした。

 桑田は日比野さんを落ち着かせようと両肩を押さえ、座らせるようにしながら「警察は勘弁してくれ」と懇願した。日比野さんは「ふざけるな」と大声で怒鳴り、桑田の頬を平手で2度叩いた。すると桑田も頬を平手で叩くなどやり返した。

 それでも部屋を出ようとする日比野さんを、桑田は両腕を掴んでベッドに引き戻した。ベッドに仰向けに倒れ、後頭部をベッド傍の壁に打ち付けた日比野さんが「これは傷害だし、お金をとって返さないのは泥棒だ」と騒ぎ始めたため、桑田は日比野さんの口を塞ごうとして右手を伸ばした。だが日比野さんは腹部を蹴るなどして抵抗した。

 桑田は日比野さんの腹部に馬乗りになり、ついに頸部を両手で強く圧迫し窒息死させた。そして日比野さんの遺体を自動車のトランク内に隠した。その後、遺体をドラム缶内に移し替えて、当時借りていたアパートから徒歩で5分もかからない資材置き場に放置した。