2002年3月に主犯の松永太死刑囚(逮捕時40)と内縁の妻である緒方純子無期懲役囚(同40)が福岡県警によって逮捕されたことで発覚した「北九州監禁連続殺人事件」。この事件では監禁されていた17歳の少女の父親と緒方の親族6人の、計7人が殺害(うち1人は傷害致死)された。

 北九州市での大量殺人に手を染める前、主犯の松永は1992年10月まで福岡県柳川市で、ワールドという名の布団訪問販売会社を経営しており、経営が破綻したときには、緒方が事務員として雇われていた。(全2回の1回目/続きを読む)

脅し、偽装、暴力まみれの自転車操業

 同社では松永に命じられた従業員が、親戚や知人に電話をかけ、「会社が潰れそうなので助けてくれ」と泣き落としを行い、それを断られると因縁をつけて脅し、高価な布団を強引に売りつける営業をしていた。しかし、寝具を購入してくれる親戚や知人等が乏しくなると、顧客のローンや立替金の支払いが滞ったことを理由に、信販会社から加盟店契約を解除されるなどして、経営が傾いていく。

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中学生時代の松永太死刑囚(中学校卒業アルバムより)

 そこで松永は、実際には販売していないのに、従業員に親戚や知人の名義を借りさせて信販契約を締結(名義貸契約)したり、架空人名義で信販契約を締結(架空人名義契約)することで売り上げを偽装。そのうえで従業員に、親戚や知人の名義で多額の借金をさせる方法でのカネの工面を強要し、なおも契約が続いていた信販会社に対して、ローンや立替金の支払いをさせるようになる。

 同時に松永は、そうした信販会社の営業所所長を、頻繁にワールドの事務所に呼び出して接待し、昼間から飲酒を勧めてはその姿を写真やビデオで撮影。「画像を本社に送る」と脅すことで、ワールドの顧客への審査を甘くさせて、信販契約の決裁を早くするように働きかけていた。

 後に、違法行為を繰り返して自転車操業を続けるワールド内部では、数人の従業員が“生け捕り部屋”と呼ばれる、雨戸の閉まった12畳の部屋での共同生活を強要されていたことが明らかになる。

 この事件を知る福岡県警担当記者は次のように語っていた。

「新たに生け捕られた者は、そこで松永に命じられた先輩従業員から、木刀や電話帳で夜通し殴られるなどして、反抗心を奪われていたそうです」