「お母さん。私、膝がどこにあるのか分からない」――2017年、レイプしようとする男から逃げようとして大ケガ、その後、障害を抱えて「車椅子生活」を強いられるようになったA子さん(当時24歳)。なぜ彼女は凶悪な犯罪者に出会ってしまったのか? その後、犯人の男はどうなったのか? 事件の様子を、前後編に分けてお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/後編を読む)
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前途有望な女性を襲った「人生最悪の一日」
大手不動産会社に就職したばかりだったA子さん(24)にとって、その日は人生最悪の一日だったに違いない。
知人と待ち合わせている途中、コンビニで時間つぶしをしていたところ、声を掛けて来たのが垣内竜太郎(当時34歳)だった。
「お姉ちゃん、ヒマ? 今から飲みに行かない?」
「これから人と会う用事があるのよ」
「じゃあ、それまでの時間でもいいからさ。もうすぐオレの友人も来るんだよ」
そこへ垣内の友人がやって来た。2人から熱心に誘われ、「3人ならおかしなことにもならないか」と判断したA子さんは、その申し出を了承し、3人で近くの居酒屋に入った。
A子さんは海外の大学を卒業し、研修期間を終えて、赴任地にやってきたばかりの有望株だった。
3人で飲んでいるうちにA子さんの携帯が鳴った。約束していた知人からだった。
「もうお開きにしなくちゃ。私、行きたいところがあるから」
「それなら今度、海へ行こうよ。オレ、海の家で働いていたことがあるんだ」
「それじゃまた今度ね」
A子さんは垣内にねだられて連絡先を交換。「また機会があれば会う」ことにした。
もう一人の男は車で来ていたので代行を呼んだが、垣内はA子さんに「送って行く」と言って聞かないので、2人でタクシーに乗り込むことにした。
すると、そこへA子さんの知人から電話がかかってきた。「急用ができて行けなくなった」という連絡だった。それを知ると突然、垣内の態度が変わった。
「それならオレの家へ行こう」