昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

韓国パシュート事件の“闇”は、日大アメフト部のような後味の悪さだった

連盟に君臨するドン、選手をかばうどころか責任転嫁するコーチ……

2018/06/01

選手をかばうどころか責任転嫁

 問題のパシュート戦では、最後尾の選手へのいじめがあったのかどうかが調査された。当事者のインタビューやタイムなどが分析されて、キム・ボルム選手が最後尾の選手をわざと置き去りにしたわけでも、また最後尾の選手も故意に遅く走ったわけでもないと判断された。意思疎通ができていなかったハプニングであり、いじめもなかったという。

 そもそも走者の順番は、当日の競技前、選手がウォーミングアップ中に監督が通達した。「最後尾を走れ」と言われた選手は、自分のコンディションに多少の不安はあったものの、先輩としての責任を果たそうと受け入れたという。

「パシュートはチームワークが重要ですから、何度も重ねて練習することが求められますが、3人で走ったのも数えるほどだと当時から選手が公言していました。試合直前に順番を決めたというのはメダルを考えていなかったからなのか理解に苦しみます。いずれにしても、記者会見でコーチは最後尾の選手が自ら最後を選んだと話した。選手をかばうどころか選手に責任転嫁していたわけで、あきれてものがいえません」(別の記者)

マススタート男子の金メダリストにも疑惑が…… ©getty

 ほかのコーチにも醜聞は噴出している。大会直前、別のコーチは女子選手が自分の指摘に不満をもらしたとして、密室に呼び出し、拳で殴るなどの暴行を働いたことも明るみになっていて、この選手は脳しんとうと捻挫で全治3週間と診断されていた。

 さらに、マススタートで金メダルをとったスター選手、イ・スンフン選手にも後輩を暴行したという疑惑が浮上した。疑惑を巡っては、「叱咤激励の範疇」とする声と「暴行された」と認識する選手に分かれているそうで、さらに調査が入るという。イ選手はソフトなイメージがウリで、オリンピック後はバラエティ番組にでるなど好感度が高かっただけに衝撃が広がっているが、「キム・ボルムにしてもイ・スンフンにしても、チョン氏のお気に入りで、選手村とは別枠で練習を施されていたそうで、他の選手と軋轢が生じてもおかしくないでしょう」(同前)。

糾弾されたボルム選手は連盟の犠牲者?

 ドンが組織を牛耳り、意のままに振り回し、分が悪くなれば他人に責任転嫁。それでも肩書きにはなんとかしてしがみつこうとするその往生際の悪さまで、日大アメフト部の一連の騒動とシンクロする。いやいや、こんなことは大小規模は違えど、身近なところでもよく見かける光景か。

マススタートの金メダルを喜ぶ高木菜那(中央)の横で浮かない表情を浮かべるキム・ボルム(右) ©JMPA

 30代の知り合いの会社員はこんなことをつぶやいていた。

「権力に惑わされないように生きていきたいけど、どうだろう。ただ、あんな大人にはなりたくない」

 犠牲となった選手は、晴れの舞台になるはずだった試合で社会から糾弾された記憶を一生抱えて生きていかなければならない。

 後味が悪く、そしてやるせない。

 せめて、いや、だからこそか、勇気を振り絞って謝罪した選手の気持ちを受け止めて、見守っていく気概ぐらいは持っていたい。

この記事の写真(4枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー