いずこも同じ――。

 韓国で「大韓氷上競技連盟」(スケート連盟)の“闇”があぶり出された。

銀メダル獲得するもリンクで土下座

 発端は、2月の平昌冬季オリンピック、最後尾の選手を置き去りにしたままゴールしたと物議を醸したスピードスケートのパシュート戦だ。

ADVERTISEMENT

 この事件で一躍、悪役になってしまったのが、先頭でゴールした金髪のキム・ボルム選手。スピードスケートのマススタートでは銀メダルを獲得するも、観客に向かってリンクに頭をこすりつけるように土下座したシーンを覚えている人も多いだろう。

観客に向かって土下座したキム・ボルム ©getty

 キム選手は、パシュート戦の翌日にも記者会見を開いて謝罪したが、韓国世論の怒りは収まらなかった。青瓦台(大統領府)のホームページの掲示板(国民請願掲示板)には、「キム・ボルム、パク・ジウ(ともにパシュートに出場)選手の資格剥奪と積弊氷上連盟(大韓氷上競技連盟)の厳重処分を請願します」という請願が書き込まれ、これには60万人を超える驚愕の賛同者が集まり、締め切り終了後の3月末から政府による調査が始まっていた。

 調査はいったん4月末で終了し、その結果が5月23日に発表された。そこで明るみになったのが、大韓氷上競技連盟の闇と、その中心にいた“ドン”の存在だった。

関係者の間では「まるでマフィア」

 全国紙の記者が語る。

「派閥を作り、連盟で帝王のように振る舞っていたのが、同連盟前副会長で韓国体育大学教授のチョン・ミョンギュ氏です。チョン氏についてはずいぶん前から人事権を握ってコーチを不当に解任したり、特別な選手だけを贔屓にするなどさまざまな問題が囁かれていましたが、みな報復を怖れて口をつぐんでいたようです」

 チョン氏(55歳)はスピードスケート選手からコーチに転身した人物で、「金メダル製造者」の異名もあり、韓国に数々のメダルをもたらしたが、「ひたすら自身の権威を高めるためにメダルに固執していた」(同前)。自分が気に入らない外国人監督の訓練を故意に妨害し解任する一方、選手にセクハラした子飼いのコーチはお目こぼしし、また、メダル圏内にいる選手には特別に自身の大学で訓練を施すなど独裁的で、関係者の間からは、「まるでマフィア」(同前)といわれていたという。