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「官邸の記録を調べた」から「首相動静も確かめた」へ

 首相は22日に否定。しかしこの「否定の仕方」について時系列で読んだら「あっ!」と気づいてしまった。今回の読み比べポイントである。

 まずこちらの記事を読んでいただきたい。

《22日朝。安倍首相は急きょ首相官邸で記者団の取材に応じ、愛媛県の文書を真っ向から否定した。「ご指摘の日に加計理事長と会ったことはない。念のため昨日、官邸の記録を調べたが、確認できなかった」》(朝日新聞 5月23日)

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安倍首相 ©getty

 これを頭に入れて、翌日の紙面(首相の言葉)を読んでほしい。

《「官邸でも自宅でも、記者が出入りする人を逐一確認している。首相動静も確かめた」とし、「自宅も含めて会っていない」と否定した。》(朝日新聞 5月24日)

 微妙な変化がわかるだろうか?

 22日は「官邸の記録を調べた」と言っていたのに、23日は「首相動静も確かめた」とわざわざ動静記事をメインにし始めたのだ。

入邸記録はあったのか、なかったのか?

 この変化はなぜか? 答えはここにある。

《菅義偉官房長官「入邸記録残っていない」 愛媛県の新文書記載の面会日》(産経ニュース 5月22日)

 首相が「官邸の記録を調べた」と言った日に、菅官房長官は「入邸記録は速やかに廃棄される取り扱いになっており、残っているか調査を行ったが確認できなかった」と述べたのだ。

菅官房長官は「入邸記録残っていない」 ©getty

 安倍首相と菅官房長官、2人の説明に食い違いが発生している。それとも、安倍首相は廃棄された記録を確認したのだろうか?

 この点に気づいたあとで23日の朝日一面を読むと流れがわかる。行間を楽しめる。

《首相は22日朝、首相官邸に入った際に記者団の質問に答え、15年2月25日の面会を否定。さらに午後の国会答弁でも重ねて否定した上で、「入邸記録は使用目的終了後、遅滞なく廃棄する取り扱いとされており、加計理事長が官邸を来訪した記録は確認できなかった」と説明。》(朝日新聞 5月23日)

 おわかりいただけただろうか。朝に言った「面会の否定」は「官邸の記録を調べた」が前提であったが(23日の朝日の別の記事・先ほど引用)、午後の国会では「入邸記録は廃棄」と首相自身が説明しているのである。午前と午後で言っていることが違う。つまりすり合わせをした様子がうかがえるのだ。