1ページ目から読む
2/3ページ目

「慎司さんが前半15分でシステムを変えたら急にうまく回りだして」

「1週間ずっと3バックの練習をしてたんですけど、試合になったら全然うまくいかない時がありました。それを見た慎司さんが前半15分で4バックに変えたら急にうまく回りだして、結局その試合は勝ったんですよ。1週間練習してきたことを捨てる判断は難しいし、早い時間帯でシステムを変えるのも不安なはず。でも思い切って決断できるのはやっぱり何かあるのかなって。監督としての経験はないはずなのに、そういう判断がハマることが何回もあったんですよ」

ウォーミングアップを手伝い、選手にも声をかけていた

 岡崎自身は、決して“思いつき”でやったわけではないと強調する。

「選手の頃は監督がシステムを変えるのなんて簡単だと思ってたし、(いろいろなシステムのバリエーションを)用意しとけよって思ってたんですけど、試合中って用意してなかったことが起きるんですよね。だからその時に決断できるかどうか、コーチに何を見てもらうか、どこのプレスがはまってないか、フォーメーションをどう変えたらはまるか、そんなことを戦況が良くなるまでずーっと考えてます。でも考えてもつきなくて、最後は何ていうか運みたいなところもありますし」

ADVERTISEMENT

 “考えて考えて、最後は運”というのは実に岡崎らしい表現だ。

 プロ選手としてのキャリアは20年、ドイツでもプレミアでもプレーした岡崎だが、アマチュアの世界とは無縁だった。そんな岡崎にとって、6部リーグの選手たちのプレーは「信じられないこと」の連続だという。

岡崎の高校時代の先輩である山下喬がクラブの会長を務めている

「そんなところでドリブルしたら危ないに決まってるとか、『なんでそんなことすんねん』みたいなプレーは多いですよね。プロとアマチュアの違いを考えた時に、一番違うのは生き残りを考えているかどうか。上にいけばいくほど、その世界で生き残るためのプレーを選択するようになるものなんですけど、下のリーグは不思議なプレーが多い。大人になってからそういうプレー中の判断を変えるのは難しいけど、育成世代の子供たちなら変えられるから、それはやりたいなって思ってますね」

 バサラマインツのグループチームのバサラ兵庫には育成組織があり、岡崎の経験やノウハウが若い選手に注ぎ込まれているという。

 一方で、自身のような元トップ選手がアマチュアの環境にいることについて周囲はどう思っているのだろうか。

「そういうことって、自分はなにも考えていないんですよ。だからこそバサラマインツっていうアマチュアクラブを立ち上げたわけだし。でも周りは時々言いますよね。アンドレアス・マイヤー副会長が選手たちに『そんなプレーをして岡崎に恥をかかせるな』とか言ったり。あれはちょっと変な気分ですね」