荒野を切り開くか、目的への合理的なルートか。今年5月に現役を退いた元サッカー日本代表・岡崎慎司(38)が選んだのは前者だった。
現役を引退したサッカー選手のセカンドキャリアの王道といえば、育成世代の指導者を務めながらプロを指導できるライセンス取得を目指すことだろう。
岡崎のような日本代表クラスであれば、解説者やテレビタレントのような道もある。実績を見ればどんな選択だって可能に見えたが、彼が選んだのはドイツ6部のアマチュアクラブ「バサラマインツ」のオーナー兼監督という泥臭い道だった。
現役を退いてすぐに、コーチを経ずに直接監督になること、その舞台が海外であること、しかもそれが自分で立ち上げたクラブであることも、なにもかも異例ずくめだ。
「基本的には監督業に専念させてもらっていて、その次に営業」
岡崎は現状を楽し気にこう話す。
「基本的には監督業に専念させてもらっていて、その次に営業。選手時代にはやらなかったような自分を使うというか、頭を下げるようなこともやっています」
岡崎が滝川第二高校サッカー部の2期上の山下喬(現会長)らとともにバサラマインツを立ち上げたのは、現役だった2014年。ドイツ11部からスタートし、5シーズン連続で昇格する快進撃を見せたものの、2019年に6部昇格を果たして以降、5部昇格の壁にぶつかる時期が続いている。クラブ創立10周年を迎えた2024年は、岡崎慎司を監督に迎え新たなフェイズに入った。
バサラが戦う6部は日本に置き換えると、地域リーグ2部に相当する。エリアはドイツ南西リーグに属し、今季は全17チームで戦い7位で前半戦を終えている。
アマチュアリーグのため多くは地元選手で構成されているが、日本人選手も複数所属している。Transfermarkt.jpによれば、リーグ全体の登録選手は461人。そのうち海外組は92人だが、そのうちの12人はバサラマインツに所属している。つまり、6部リーグにおいて異彩を放つクラブということだ。