2023年10月7日、パレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配するハマスが、イスラエルへ大規模なテロ攻撃を仕掛けた。これに対し、イスラエルはガザ地区へ容赦ない大規模攻撃を開始。戦闘開始から1年以上経ち、ガザにおける死者数は4万人を超えている。

 ユダヤ系である仏の歴史人口学者・家族人類学者のエマニュエル・トッド氏は、「イスラエル・ガザ紛争」に関して、これまで発言を控えてきたが、自身のユダヤ家系の歴史にも触れながら、躊躇いながらも初めてこの問題にコメントした(初出は伊誌「Krisis」)。

――ガザの現状を見て、あなた自身はどう感じていますか。

ADVERTISEMENT

 私にとってかなりつらいテーマで、あまり話したくないのが正直なところです。私の出自の支配的な半分はユダヤ系だからです〉

エマニュエル・トッド氏

 トッド氏の父は、著作にアルベール・カミュの伝記もある文芸記者。祖父はサルトルの親友で、「ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい」という名言で知られるポール・ニザンだ。祖母のドロシー・トッドは、ファッション誌『VOGUE』の編集長を務めた。まさに「華麗な知識階級」だが、さらにアルフェン家というユダヤの古い家系も引き継いでいる。

イザーク=ストロースが先祖……ユダヤの古い家系

〈私の家系はイスラエルと特別なつながりはありません。フランスで言うところの「ユダヤ人ブルジョワ」で、何よりもフランスの愛国者の家系です。19世紀の我が家系の栄光は、ナポレオン三世お気に入りの作曲家・指揮者だったイザーク=ストロース〔1806-1888〕です〉

〈イザーク=ストロースは、文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースと私の共通の先祖です。アルフレッド・ドレフュス〔仏の軍人でドレフュス事件の被疑者〕の妻リュシー・アダマールは、私の曾祖母のいとこにあたります〉

〈第2次大戦中、私の母方の家族は米国に避難しました。用心深く行動しなかったいとこたちは、収容所に送られました〉