「現代文学の最高峰の一つ」とされるガブリエル・ガルシア=マルケスの世界的ベストセラーが遂に映像化された。『百年の孤独』(ネットフリックスで配信中)。原作は46の言語に翻訳され、累計発行部数は驚異の5000万部超。長年、

「文庫化したら世界が滅びる」

 と囁かれてきたが、半世紀以上を経て昨年、文庫化され、30万部を超す大ヒットに。だが、映像化となると話は別だ。果たしてあの壮大な物語や超自然的要素が織り込まれた“魔術的リアリズム”など独特な筆致はどう描かれるのか。著者も「映画化は不可能」と述べていたはずだが……。

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 今回、全16話のドラマシリーズとして配信される本作の製作総指揮には原作者の実の息子2人が名を連ねている。ガルシア=マルケスは無類の映画好きで、その影響で息子のロドリゴ・ガルシアは映画監督になった。父親は、3時間ほどの内容に圧縮されハリウッド俳優が英語で演じる映画は決して望まなかったが、

「スペイン語で(物語の舞台の)コロンビアで撮影し、100時間の長さなら可能かも」

 と語ったという。父の望みは息子たちと資金力のあるネットフリックスによって叶えられた。スペイン語圏の俳優が演じ、コロンビアに巨大セットを組んで撮影が行われた。

©佐々木建一

 原作は、ある一族がジャングルに「マコンド」と呼ばれる村を作り、愛憎や近親相姦など様々な人間模様を経て繁栄から滅亡へと向かう百年を描いたもの。一族の栄枯盛衰を描きながら錬金術(科学の発展)、法や宗教、反乱といった人類史の歩みを彷彿とさせる物語だ。今回のドラマ化はそうした複雑な要素も妥協せず描く圧巻の出来。舞台のマコンドは異なる時代を描くため4セット分(村4つ分)が作られた。そこを人々が行き交い、流れるような美しいカメラワークで捉える。リアルな空間があるから“魔術的リアリズム”とされる非現実的な展開も引き立つ。原作の難解さに落伍した人こそ必見である。

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