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「なぜ東大は授業料を値上げしなくてはならないほどお金に困っているのか」

「東大は国からたくさんの予算を回されているはずなのに、なぜ授業料を値上げしなくてはならないほどお金に困っているのか」。そう感じる人は多いだろう。東京大学は、大阪大学に次いで国立大学で2番目に学生が多く、教員数は最も多い。このため常に、国から配分される運営費交付金の金額は最も多い。

 そんな東京大学でも、法人化した04年度には926億円受け取っていた運営費交付金は、23年度は847億円まで減った。そこで収入源を増やそうと、企業などとの共同研究や寄付金の獲得などに力を入れてきた。取り組みの甲斐あって、収入額は04年度の2067億円から23年度は3082億円に増えた。

 ノーベル賞につながる成果を挙げてきた素粒子観測施設の後継として、岐阜県飛騨市に「ハイパーカミオカンデ」を整備するなどとして「大学債」を発行し、その高い信用力を生かして300億円を集めたこともある。

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東大の安田講堂 ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

東大生に裕福な家庭の出身者が多いことも値上げの一因に

 一方で、世界の大学などと競い合っていくためには、最新の研究施設・設備を整備したり、国内外の優秀な教員や研究者を集めたりしなければならず、巨額の資金が必要となる。いずれ返済が必要になる大学債の発行にも限度があるうえ、光熱費の高騰で支出が年数十億円も増えている。このため、学生が直接恩恵を受ける教育環境の改善に回す予算が確保できないという。

 東京大学の収入全体からみれば、23年度の「授業料、入学料、検定料収入」はわずか5%(149億円)だ。当初に値上げによって見込んだ増収も約29億円で、見かけ上の効果は限定的だ。それでも同大幹部は、授業料値上げの意義をこう説明する。

「全体から見ると額は少ないが、使途に制約がある寄付金や共同研究の資金などと違って、何の『ヒモ』もついていない。授業料収入は、大学にとって一番使いやすいお金だ」

 東京大学が20年ぶりの値上げを検討する背景にはもう1つ、東大生には裕福な家庭の出身者が多いという事情がある。21年度に同大が実施した学生生活実態調査によると、世帯年収が950万円以上の学生は54%と半数を超える。高い学費を払って中学受験の塾で学ばせ、私立の中高一貫校などに通わせてきた世帯が多い。このため、学内には「授業料値上げの影響は限定的」との見方があった。